多くのハリウッドスターをはじめ、各国首脳などがこぞって訪れる、フュージョン和食の有名レストラン、ワクギン(Waku Ghin)。先月28日に、そんなワクギンの味が気軽に楽しめるスイーツのブランドがオープンしました。「ワクギン」の名前は、シェフの和久田哲也氏の名前と、好きな色、銀色にちなんでつけられたものですが、このスイーツ専門ブランドの名前は「パティスリー・プラティーヌ(Patiserrie Platine)」。美しい銀色に輝く「プラチナ」のフランス風の読み方です。その名前からもわかるように、持ち帰りスイーツだからと言って、質を落として大量生産するなどの妥協は一切ありません。
もちろん、プラティーヌで提供されるデザートはすべて、ワクギンの厨房で作られていて、レストランで提供されるスイーツとの違いは、家庭に持ち帰っても、味や質感を壊さないテクニックが使われていること、そして、料理のコースの締めくくりとしてではなく、スイーツを食べにくるお客さんのためにと、味わいのバランスを工夫しているところだとか。
和久田シェフは、「ワクギンのスイーツは、上質な材料を使い、甘さとテクスチャーにこだわっている。良い材料を使ってレシピ通りに作れば、誰でもある程度美味しいものができるが、本当に最高のものを創るにはセンスが必要。(現場を任されている)石野シェフのすごいところは、その先のセンスの部分」と話します。
そして、スイーツ専門ブランドを立ち上げようという気持ちを後押ししたのは、石野シェフの、同じものをたくさん、同じクオリティで精度を高く作りきる能力。それを見て、レストランの味をそのまま家庭に届けられると自信を持ったそう。
オープン前に試験的に行われた美食イベント「エピキュリアン・マーケット(Epicurean Market)」でも、ワクギンのスイーツは大人気。あまりに人気なため、期間中は石野シェフは徹夜でケーキを作っていたそうですが、そんな忙しさやあわただしさはみじんも感じさせず、ケースに並んだケーキは、一寸の隙もなく美しく仕上げられていました。
「もちろん、失敗することもある。しかし、失敗したものは、お客様には決して出さない。むしろ失敗からいかに早く立ち直って、完全なものを作れるかどうかが求められている」と和久田シェフ。
ワクギンのスイーツは、一言でいうと、素材の味がしっかりと楽しめ、口に入れた瞬間は強い印象を残すのに、べたつかずすっと消える、上品な味わい。
それぞれ、シェフ一押しのデザートをお聞きすると、和久田シェフは、「ギンチーズケーキ」を。食べてみると、ふんわりとしたクリーミーな食感が口の中に広がり、すっと溶けていきます。そして、センターに入ったレモンカードは、はっとするような「レモンらしさ」を持った味。「人がおいしいとイメージする、そのものの味を再現している。レモンなら、おいしいレモンと人が思う味になっているはず」と和久田シェフ。
デコレーションにも手がかかっています。石野シェフが一枚一枚手作りしている羽毛を模したホワイトチョコレートが上品な輝きを放っているので、お聞きしてみると本物のプラチナパウダーがかけられているのだとか。食べた人が気づくかどうかわからないような、細部にも手を抜かず、最上のものを届ける、そんな心意気が詰まったケーキです。
そして、石野シェフは、チョコレートケーキを。つい2日前にもレシピを変えたばかりで、5年前のワクギンのオープン以、来常に改良を繰り返しているので、思い入れが特に深いといいます。チョコレートの滑らかさと繊細でサクサクの食感のコンビネーション。ヴァローナのチョコレートを3種類使い分けているという味は、確かに重層的な深みがありつつ、切れ味よく仕上がっていました。そのほかにも、赤道直下のシンガポールならではの、南半球と北半球、両方のベストのフルーツを使い、新しいコンビネーションも生み出しているというフルーツタルトや、ふんわりとしたイチゴとピスタチオムースが香るフレーズなどもおいしかったです。
現在18種類のラインナップですが、これから、定期的に新作ケーキを出していきたいと意気込む石野シェフ。今和久田シェフが興味を持っているのはなんと、「あんぽ柿」だとか。スイーツとしてすでに完成しているような印象のある干し柿を、どんな風にアレンジしていくのか、石野シェフの挑戦も楽しみです。
ケーキはいずれもS$10〜12、持ち運びに便利な、小粒のマカロン(12個入り、S$25)も用意されています。
【データ】
パティスリー・プラティーヌ・バイ・ワクギン(Patisserie Platine by Waku Ghin)
住所: 10 Bayfront Avenue, Marina Bay Sands Hotel, Tower 1, 01897
電話: +65-6688-5568(RISEレストラン共通)
営業時間:11:00〜24:00
休み:なし
最寄駅:MRTベイフロント駅直結
仲山 今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイド。ブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。