日本は明治維新以降、欧米の文化を吸収し発展してきました。一世紀前後の短期間に急速な進歩を遂げました。完成度の高い技術を模倣するだけで、欧米諸国と肩を並べる存在となったのです。ところが成熟したヨーロッパの文明は長い期間にわたって徐々に磨き上げられたものです。その源泉を辿ると古代ギリシャのエーゲ海を囲むエリアに辿り着きます。
地中海の東北部にあるエーゲ海には大小合わせて約2500の島々が浮かんでいます。緯度的にアテネより北方に、東エーゲ諸島、北エーゲ諸島、スポラデス諸島、南方に、ドデカニサ諸島、キクラデス諸島、アルゴサロニコス諸島に分けて地図上に紹介されています。海の上には点在する島をすり抜けるように、大型フェリーから小型の連絡船まで様々な船舶がひっきりなしに往来しています。
首都アテネに隣接するピレウスの港やフリスヴォス・マリーナは、エーゲ海の海上交通の拠点となっています。全ての島に行くことができますが、限られた日程での全島制覇は不可能です。たとえ1日でもエーゲ海に漕ぎ出したいと思う人にもってこいのプランが、アルゴサロニコス諸島を巡る1日クルーズです。諸島内の3つの島、イドラ島、ポロス島、エギナ島を巡ります。
エーゲ海のクルーズ船には、大きく分けて3つの種類があります。アミューズメント設備を完備する豪華船や小型の高速艇もありますが、3階建ての中型船が最も手頃でしょう。船内の3つの多目的ラウンジ、オープン・デッキを自由に移動できるため、気分や周囲の景観に合わせて、過ごす場所を選択することができます。室内180名前後、室外160名前後の収容能力をもちます。
エーゲ海の海原に出た船は、ペロポネソス半島を右に見ながら南に向かいます。約3時間の船旅で最初に訪れるのはイドラ島です。この島では17世紀に3本のシンプルなマストを備えたポラッカ船が開発され、地中海交易をリードする存在となりました。港に入ると優しい目をしたロバが出迎えてくれます。今でも重い荷物を運んでくれるロバは島民には欠かせない存在なのです。
約1時間の島内散策を終えて船に戻ると、ポロス島への海路上で昼食です。ビュッフェ形式のランチには、バラエティー豊富なギリシャ料理、地中海料理が勢揃いします。食事を終える頃になると、オリーブと松の樹木に覆われたポロス島の姿が目前に迫ってきます。海岸線から丘の上に向かって、白壁にオレンジ色の屋根をつけた民家がピラミッド状に立ち並びます。港から北東に約3キロのカナリ・ビーチでは、エーゲ海の水を肌で感じることができます。
約1時間の島滞在を終え、最後に向かうのがエギナ島です。太陽が地中海の西に傾きはじめる16時前後に、聖ニコライ教会の出迎えを受けることになります。エギナ島は古代にはアテネと覇権を競う都市国家ポリスが形成されました。島の北東部には前5世紀にドリア式で建造されたアフェア神殿が往時を偲んでいます。オプショナルツアーに参加すれば、アルカイック時代後期の建築美に触れることができます。
エーゲ海1日クルーズは午前8時前後にピレウスを出港し、イドラ島、ポロス島、エギナ島の3つの島を巡り、19時前後に帰港します。料金も運行会社、船種によって異なりますが、中型船であれば100€前後です。