大邱近代歴史館を訪れた後、朝鮮時代の三大市場(大邱、平壌、江景)の一つとして知られる「西門市場(ソムンシジャン)」へ移動した私たち。ちょうど大邱近代歴史館で見た昔の写真の中に「西門市場」の古い写真があり、韓服を着た人々が集まる「朝鮮時代から続く伝統市場」の様子を見ていただけに、その驚くべき変化に、ちょっと隔世の感を感じたりもしました。
「西門市場」の名前の謂れは、昔の市場が大邱の城郭の西にあったからだそうです。現在の市場は、朝鮮時代にあった市場とは別の場所ににあり、「西門市場」という名前になったのも、1909年頃のことだとか。1920年代に現在の場所に移転し、現在に至っています。
青空市場だった昔とは違い、今は天井が付き、雨の日でも気兼ねなく買い物が可能できます。市場といっても、ビルになっている部分もあり、5つのエリアに分かれています。
過去には火事で焼けたこともあったそうですが、現在はみごとに再生!若者たちが多く集まる大邱一番の繁華街が「東城路(トンソンノ)」とすれば、こちらは、アジュンマたちが集まる「大邱の台所」といった風情。庶民的で、値段も安く、市場ならでの買い物が楽しめる場所です。
場所は、完成したばかりの3号線(大邱モノレール)の西門市場駅を降りるとスグ!地元の人たちメインの市場なので、市場の雰囲気が好きな人にはお薦めですが、あまりにも広いので、一度では把握しきれないかもしれません。服のオーダーメイドや韓方薬剤を購入するといった、韓国語が必要なお買いものでなければ、手ぶり身ぶりでも買い物を十分楽しめます。
今の大邱が「繊維産業のメッカ」「ファッションの町」としても知られているのは、西門市場が、朝鮮時代後期から反物市場として全国的に有名だったこととも関係があります。もともと慶尚北道周辺は綿花の生産地として知られ、この綿花が綿織物の原料だからです。
現在も西門市場では衣料品を取り扱う店舗が多く、西門市場で働く1万人以上の内、70%以上の人が衣料品を扱っています。私たちが見たのは、カラフルな美しい韓服をオーダーメイドできる店がズラリと並ぶコーナーと、布団やカーテンなどの生活用品が揃うインテリア用品のコーナー、韓国の伝統柄で作ったポシェットやお財布、ペンケースなど、ちょっとしたお土産を買える雑貨店など。生地や材料も豊富に揃っているので、見ているうちに、服のオーダーメイドとかもしたくなりました。
西門市場は、生地や材料を扱う店、リフォーム専門の店、すでに完成している生活用品の店の3種類に分かれ、さらに飲食ゾーンや韓方薬店などのコーナーもあるので、慣れるまではちょっと複雑に思えるかもしれません。観光客には、すぐ買える衣料品、雑貨、食器などの台所用品のコーナーがお薦め。私は、スマホが入るポーチとポシャギ(韓国のパッチワーク)で作られた小物袋、お財布、ペンケースを購入。このスマホポーチがこの後、旅行中大活躍するほど便利だったので、もっと買っておけばよかったと後悔しました!いくつかお土産に買って、値段をおまけしてもらうのも、市場ショッピングの楽しみの一つです。
今回入る時間がなかった飲食エリアには、大邱名物チムカルビ(激辛のカルビ煮込み)やカルグクス(うどん)、ナプチャクマンドゥ(ぺちゃんこ餃子)、ホットクやおでんの屋台など、さまざまなB級グルメが並んでいました。市場グルメもなかなか充実しているので、食べ歩きも楽しそうです!
最後に、小豆好きにお薦めの店をご紹介します。じつは、西門市場を訪れた日があまりにも暑く(33〜34℃)、途中でパッピンス(韓国のかき氷)を食べたくなった私は、ソウルにもある小豆チェーン専門店「キョンソンパッチッ・オンヌモン」を市場の中で見つけました。この店にはいろいろなメニューがありますが、小豆で有名な店です。
店の大釜で炊き上げているあずきがパウダースノーのように細かい氷の上にドサリとのせられて出てきたときには、思わずニッコリ。真鍮(しんちゅう)の器に入っているので、溶けにくく最後まで冷たく食べられます。驚くほど口どけが良く、あずきのほどよい甘みも最高です。ぜひ一度食べてみてくださいね!
【関連情報】
●西門市場(서문시장)
住所:大邱市中区大新洞 115(대구 중구 대신동 115)
営業時間:9:00〜19:00(店によって異なるので注意)
休:毎月第2・4週目の日曜日 URL://seomun.net
●西門市場観光情報センター(서문시장 관광정보센터)
☎053-661-3288 開:10:00〜18:00
●キョンソンパッチッ・オンヌモン大邱西門市場店(경성팥집 옥루몽 대구 서문시장점)
住所:大邱市中区大新洞115-322番地(대구 중구 대신동 115-322번지)
☎ 053-257-8233 URL://present2010.wix.com/okumong
●大邱市観光情報
URL://japanese.daegu.go.kr/cms/cms.asp?Menu=560 (日本語)
木谷 朋子
『留学ジャーナル』の編集者を経て1989年より2年間イギリスへ留学。帰国後はイギリスを始め、ヨーロッパ各地やアジア、オーストラリアなど、世界各地を取材。海外の旅文化や最新の旅行情報、語学、留学をテーマに幅広い分野で執筆活動を続ける。韓国関連の著作:『Live from Seoul』(ジャパンタイムズ)、『人気韓国ドラマロケ地めぐり』(学研)ほか、『るるぶ韓国』、『るるぶソウル』(JTBパブリッシング)では『韓流ブック』を担当。