大邱旅の第3弾は、大邱(テグ)の歴史を知りたいと訪れた「大邱近代歴史館」のご紹介をしようと思います。事前に大邱市観光課の丸山さんには、ぜひ今回の取材先に歴史スポットも入れて欲しいと頼んであり、訪れる前から楽しみにしていた場所の一つです。大邱は日本との関わりも深く、1920年頃、つまり日本統治時代の大邱には、人口3万2000人のうち、1万2000人もの日本人が住んでいたそうです。
現在の大邱は、韓方(ハンバン=韓国の漢方)の町としても有名ですが、繊維の町、ファッション産業の町としても知られ、いくつもの顔をもっています。歴史を遡ると、1601年には、慶尚監営が設置されています。以来400年以上、大邱は慶尚道の行政、司法、軍事の中心地として栄えてきました。慶尚監営というのは、王様から派遣された監察官が、行政や司法、軍事を司る監察府(役所)のことです。
大邱近代歴史館は、大邱で最初に訪れてみたかった歴史スポットでしたが、期待以上に興味深い展示がたくさんありました。説明をしていただいたのが、大邱市の文化解説士イ・ウォンソプ先生だったことも幸いし、ただ漫然と展示物を見ているよりも、展示されている内容を深く知ることができたと思います。
まず、とても印象的だったのがその外観です。もともとは、朝鮮殖産銀行大邱支店として1932年に建てられたものですが、ルネサンス様式の近代建築で、入口部分の装飾やアーチ型の窓など、ヨーロッパの影響を色濃く受けています。
この建物は、戦後、1954年からは韓国産業銀行大邱支店として使われ、2003年に大邱市の有形文化財第49号に指定。2008年に大邱市が買い取り、2011年に大邱近代歴史館としてオープンしました。歴史館内には、19世紀後半〜20世紀初めの大邱の暮らしぶりや町の様子が、模型や展示物、映像で紹介されています。
なかでも面白かったのが、府営バス映像体験室でした。大邱は韓国で初めて市内バスを導入した街。その府営バスのレプリカに乗り、昔の大邱の街の映像を見ながら周遊します。バーチャルとはいえ、臨場感いっぱいのバスツアーでした。昔の大邱に、たくさんの日本家屋があったことも確認できます。
教育都市「大邱」について紹介されたコーナーには、教育関連の資料や学習指導書、教科書や卒業証書なども、展示されていました。
韓国の近代史と言うと、日本の統治時代の批判的な印象を持つ方もいらっしゃると思いますが、大邱近代歴史館の館内には、そういったネガティブな雰囲気はまったくなく、過去の大邱の歴史を丁寧に展示、説明しているという印象を受けました。
何より、大邱の旅を始める最初にこの歴史館を訪れたことで、町を見る目も変わったような気がします。貴重な19世紀の近代建築を、このように近代歴史館として保存して残そうという大邱市の皆さんの思いにも触れることができる空間です。
【関連情報】
●大邱近代歴史館 대구근대역사관
大邱市中区布政洞33 대구시 중구 포정동 33/대구시 중구 경상감영길 67
☎053-606-6430 開館時間:9:00〜21:00(4〜10月)、9:00〜20:00(11月〜3月)※土日・祝日は1時間短縮、入場は閉館30分前まで
入場無料 URL://artcenter.daegu.go.kr/dmhm/eng/01.asp
●大邱市観光情報
URL://japanese.daegu.go.kr/cms/cms.asp?Menu=560 (日本語)
木谷 朋子
『留学ジャーナル』の編集者を経て1989年より2年間イギリスへ留学。帰国後はイギリスを始め、ヨーロッパ各地やアジア、オーストラリアなど、世界各地を取材。海外の旅文化や最新の旅行情報、語学、留学をテーマに幅広い分野で執筆活動を続ける。韓国関連の著作:『Live from Seoul』(ジャパンタイムズ)、『人気韓国ドラマロケ地めぐり』(学研)ほか、『るるぶ韓国』、『るるぶソウル』(JTBパブリッシング)では『韓流ブック』を担当。