日本やヨーロッパ諸国は国土も狭く国内の移動には鉄道が便利ですが、南米大陸では鉄道網が整備されていません。ペルーでも各都市を移動する場合には、飛行機かバスを利用することになります。飛行機は運賃が高価なため、ペルーの人々にとっての足は国内を網の目のように走るバスがメインです。数多くの会社がサービスと運賃を競い合っているため、旅行者も格安料金で各地を巡り歩くことができます。
ペルーで国内全域に長距離バスを運行する代表的な会社は、クルス・デル・スル社、オルメーニョ社です。ともに2階建て、トイレつきのデラックスな車両を多数所有しています。他にも、シアル社、シバ社、モービル社、パロミノ社などが、各種のグレードを揃えています。
バスの車両にはブラジルのマルコポーロ社で製造のものが多いようです。ドイツのベンツ社のバスの座席などは日本人にとっては高すぎることもあるのですが、南米メーカの座席には違和感はありません。スタンダード・シートでも少しリクライニングにすれば快適です。夜行の場合は1人掛けのVIPシートや2人掛けのレギュラー・シートを選べば、ぐっすりと寝ることができます。夢から覚めると次の目的地に到着です。交通費が節約できるばかりでなく、宿泊費はいらず、時間の有効活用に繋がり、一石二鳥を超える大きなメリットがあります。
ペルーの長距離バス路線で中心になる都市は首都のリマです。ところがリマには、各バス会社の車両が発着する共同ターミナルはありません。運行会社ごとに独立したターミナルを設けています。
クルス・デル・スル社のリマ・バス・ターミナルは、早朝から深夜まで大勢の人で溢れています。カウンターがずらりと並ぶ光景は、まるで空港ロビーのようです。乗車口も飛行機の搭乗ゲートと見間違えそうです。手荷物検査までありますから、空港での手続きの全てを行った後にバスに乗車するのです。
リマを出発したバスの大半は、南北のアメリカ大陸を総延長17000キロで繋ぐ、パン・アメリカン・ハイウエイを走ります。北に約9時間でトルヒーヨ、約12時間でエクアドル国境近くのチクラヨです。逆に南に向かって約7時間走れば、大地に描かれた地上絵で広く知られるナスカに到着します。バスの乗り心地は走る道路の影響を受けますが、整備の行き届いた路面であれば、僅かな振動すらなく氷の上を滑るように走ります。窓の外には日本では見ることができない光景が流れ、車内に設置されたディスプレイでは映画の上映もあるため飽きることはありません。
クスコから進路を東に変え約13時間アンデスの険しい山道を登れば、かつてインカ帝国の首都として栄えたクスコです。坂道を走るバスに長時間乗車することに抵抗を感じる人も多いようですが、夜行バスに乗れば安眠を妨害されることもなく斜面を爆走してしまうようです。
バスの運賃はバスの運行会社と座席のグレード、為替レートで変わりますが、リマ・ナスカのスタンダード・シートで2000円前後、ナスカ・クスコのレギュラー・シートで4000円前後が目安となります。飛行機に比べると圧倒的に安価ですがバスの旅には、どうしても時間的なデメリットがあります。限られた日程でスケジュールを組まざるをえない場合は、国内線の飛行機の利用も考えなければならないでしょう。費用と時間のバランスを考えて、空路と陸路をバランスよく組み合わせれば、より魅力的な旅程となることでしょう。