オランダというと、アムステルダムと運河、風車にチューリップが頭に浮かぶ人がほとんどでしょう。
「低地の国」という名の通り、海抜が低く、その歴史は治水と干拓の歴史でもありました。
アムステルダムでなくても、多くの町には運河が流れ、自転車とボートさえあれば、どこでも行けるのではないかと思えてくる国です。
そんなオランダの特産品の一つがチーズ。特にエダム・チーズとゴーダ・チーズが有名です。ヨーロッパのチーズの名前は、普通、それを作る町の名前を取ったもの。
つまり、オランダには、エダム(Edam)という町と、ゴーダ(Gouda)という町があるのです。
どちらも、絵本に出てきそうな可愛らしい町で、都会とはまた違ったオランダの魅力を味わうことができます。
エダムは、アムステルダムから北東へ20キロメートルほど行った場所にあります。運河に縁どられた町は、どの角を曲がっても、写真を撮りたくなる風景が広がっています。
16世紀に毎週チーズ市場を開く権利を得たエダム。町には、チーズの計量所も残っています。
エダムは、南隣の漁港フォーレンダム(Volendam)と合併された自治体です。フォーレンダムとエダムの東端は、海に面していて、長く堤防が伸びています。この堤防沿いを歩くと、土地よりも、海面の方がずっと高いことが良くわかります。
もうひとつのチーズの町ゴーダは、アムステルダムより南のユトレヒト(Utrecht)とロッテルダム(Rotterdam)の間くらいに位置します。やはりぐるりと運河に囲まれた町で、水運で栄えたという昔が偲ばれます。
ゴーダで、とりわけ人目を惹くのは、なんといってもその市庁舎。子供の頃読んだ絵本に出てきたお城のような高い建物が、石畳の広場にでん、と構えています。
オランダでも最も古い市庁舎の一つで、15世紀半ばのゴシック様式です。
市庁舎には、カリヨンつきの仕掛け時計があり、1272年ゴーダが都市権を得た時の場面が再現されます。
市庁舎の後ろにあるチーズ計量所は、1667年に建てられたもの(完成したのは1669年)。今は小さなチーズ博物館となっていて、ゴーダチーズの販売も行っています。
オランダを旅して思うのは、その魅力の一つは、まず、町の整然とした美しさ。
次に、緑の多さと街角のかわいらしさ。
あと、忘れてはならないのが、「坂がない」ことです。
「写真を見ただけではわからず、行ってみたら坂と階段ばかりで移動が辛かった」という経験をお持ちの年代の方には、特にお薦めしたい国の一つです。
交通の便も整っていますし、オランダまで行くなら、ぜひ小さな町にも足を伸ばして、都市では味わえない魅力を感じてほしいと思います。
【データ】
エダムチーズ計量所(Cheese Weigh House Edam)
住所:Jan Nieuwenhuizenplein 5, 1135 WT Edam
Tel:+31 (0)6 839 73 158
URL:www.edamcheeseshop.com
ゴーダチーズ計量所(De Goudse Waag)
住所:Markt 35, 2801 JK Gouda
URL:http://www.goudsewaag.nl/nl/de-waag/the-weigh-house
(冠ゆき)
(2015/09/04)
冠 ゆき
山田流箏曲名取。1994年より渡仏。大学院での研究の傍ら、大学や専門学校で日本語日本文化講師を勤める。2000年より、ポーランド、イタリア、中国の生活を経た後、2013年フランスに戻る。旅好きでもあり、今までに訪れた国は約40カ国。六ヶ国語を解する能力と多様な文化に身をおいてきた経験を活かし、柔軟かつ相対的視点から、フランスと世界のあれこれを切り取り、webマガジンCafeglobe、とっておきのフランスInfoなどで日本に紹介中。