約20万年前に現れ、2万数千年間に絶滅したとされるネアンデルータル人。名前だけは聞いたことがあるという人も多いと思います。そのネアンデルタール人、なぜ「ネアンデルタール」なのか知っていますか?
じつはネアンデルタールという場所で発見されたからなんです。
デュッセルドルフ中央駅から列車で15分ほどの場所に、ネアンデルタールという渓谷があります。かつて、ここで石灰岩の採掘をしていた際に、骨が出てきました。最初は動物の骨だと思っていたそうですが、念のため研究者へ見せた結果、なんと人類の化石だったというわけです。そして発見場所の地名から「ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)」と命名されました。
現在ここには、ネアンデルタール人が送っていた当時の生活様式などを展示する「ネアンデルタール博物館」が立っています。1996年に完成した同博物館の外観は、とてもモダンなデザイン! ドイツ国内および海外から公募した130案の中から選ばれたそうです。
館内に入ると、まずネアンデルタール人がお出迎え。フロアは緩やかに、らせん状に上階へ向けて伸びる完全なバリアフリー設計です。教育施設らしく子供にも配慮した展示構造になっており、ファミリーで楽しめます。子供向けに作られているため、言葉が分からない外国人でも、ある程度の意味はつかめます。
公式サイトによれば同博物館は、ドイツの中でも特に成功した博物館の1つとのこと。年間17万人の来館者が訪れるそうです。私が見学した日も、多くの子供連れや特別支援学校の生徒たちが、来館していました。
館内は至る所で、現代人になり今の服装をしたネアンデルタール人が出迎えてくれます。ネアンデルタール人が絶滅した理由は解明されていませんが、もし彼らが現代まで生き延びていたら、こんな風に生活していたのかもしれません。
もっとも新しい説では、我々ホモ・サピエンスの遺伝子(アフリカのネグロイドを除く)には、ネアンデルタール人の遺伝子が少しだけ混入しているということが分かっています。特に白い皮膚、金髪や赤毛、碧眼はネアンデルタール人から受け継いだ可能性が高いのだとか! 6万年前くらいに混血したのではないか、ということだそうです。
博物館のすぐ近くには小川が流れ、骨の発見現場や石器時代工房をつなぐ散策路が整備されています。天気の良い日には絶好の散歩コースです。緑に囲まれてリフレッシュしながら、私たちの身体の一部に受け継がれているかもしれないネアンデルタール人のことに、色々と思い巡らせてみても良いですね!
【データ】
店名:ネアンデルタール博物館(Neanderthal Museum)
住所:Talstraße 300 40822 Mettmann
Tel:02104.9797-0
URL:https://www.neanderthal.de/en/
開館時間:10:00〜18:00
料金:9ユーロ
加藤 亨延
ジャーナリスト。日本の雑誌に海外事情を寄稿。専門は日・英・仏の比較文化。ロンドンにて公共政策学修士を修了後、東京で雑誌、ガイドブック制作に携わる。2009年9月よりパリ在住。取材などで訪れた先は約60ヵ国800都市。現地コーディネートも担当。趣味は飲物。各国蔵元とミネラルウォーターの源泉へ足を運ぶことがライフワーク。フランス/パリの旬の話題を中心に更新していきます。ご連絡はこちらまで。