天空都市のマチュピチュは、アンデスの山並を作るペルーのウルバンバ渓谷の尾根に沿って築かれました。世界の大都市の大半が平坦な土地に作られているにもかかわらず、標高2400メートルを超える山の稜線に沿って集落が作られたことは未だに謎に包まれています。最盛期には数百人の人々が暮らしていた要塞からは、インカ帝国の滅亡によって人の姿が消えました。
マチュピチュの遺跡に最も近い集落が、かつてはアグアス・カリエンテス村と呼ばれたマチュピチュ村です。渓谷の谷間を流れるウルバンバ川沿いに、細長い村落が形作られました。現在では約3000人の人々が暮らす小さな村は、四方がアンデスの峰に囲まれ、陸の孤島なのですが、いつも大勢の人々で溢れています。マチュピチュの遺跡に向かう人は、必ずこのマチュピチュ村を通らなければならないのです。
鉄道のマチュピチュ駅から村の中心に向かう途中に、バスターミナルがあります。毎日5時30分から14時30分まで、遺跡の入口に向かうシャトルバスが運行しています。時刻表はないのですが、車内が乗客で一杯になると同時に発車していきます。運行時間帯には続々と観光客が集まるので、待ち時間はほとんどありません。遺跡の観光を終えれば、復路のバスで同じ所に戻ってきます。列車で午前中にマチュピチュ駅に着き、そのまま遺跡に向かい夕方に戻って来て、その日の内にクスコ方面に戻ることもできます。でも旅程に余裕を設けて、遺跡の麓に広がる村で一泊したいものです。
マチュピチュ村の中心は、鉄道の駅からバス停を超え、1分前後のところにあるアルマス広場です。広場の中心には槍を空につきあげるインカ皇帝の勇ましい姿が見られます。第9代皇帝のパチャクティの像です。パチャクティは勇壮な軍をしたがえ、帝国の領土を飛躍的に拡大しました。マチュピチュの遺跡は、パチャクティが在位した15世紀に建造されたと伝わります。
アルマス広場の周囲には教会、市庁舎、学校、市場が取り囲みます。広場から東の方角に延びるのが、メインストリートのインカ・パチャクティ通りです。階段状の歩道の両側には隙間なく、土産物店、レストラン、ホテルが軒を連ねています。どの店の人も観光客を暖かく迎えてくれます。わからないことを聞けば、笑顔で丁寧に教えてくれます。初対面であるにもかかわらず、気さくなコミュニケーションが広がります。夕暮れ時には、遺跡の観光を終えた人と翌日の遺跡観光を予定している人が交差し、独特な賑わいを見せてくれます。世界各国の人々で溢れるため国際色豊かです。
インカ・パチャクティ通りの数十メートル南にも、様々な店舗が並ぶ通りがあります。通りに沿って、アグアス・カリエンテス川の清流が流れます。川沿いの光景は日本の地方の温泉地の風景のようにも見え、穏やかで落ち着いた雰囲気を漂わせています。どちらの通りも300メートル足らずですから、地図などなくても道に迷うことなく、村の隅々まで見ることができます。
どの店も22時には閉店してしまいます。21時前後から店仕舞を始めるところもありますから、ショッピングや食事は早めに済ませる必要があります。