2015年6月28日から開催された第39回世界遺産委員会では、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」をはじめ24件が新たに世界遺産として登録されました。年々追加登録される世界遺産の数は1031を数えます。その第1号は1978年に自然遺産として登録されたガラパゴス諸島です。南米大陸から約1000キロの太平洋に浮かぶ絶海の孤島では、人の手が加わらない自然環境の中、生物たちが独自の進化を遂げました。ビーグル号で航海に乗り出したダーウィンは、ガラパゴスの生物を観察しながら進化論の着想を得ました。
太平洋の赤道を挟む東西約300キロ、南北約380キロの広いエリアに浮かぶ100を超える島々によってガラパゴス諸島が構成されています。バルトラ島とサン・クリストバル島には空港が整備され、エクアドルのキトやグアヤキルから約2時間のフライトでガラパゴスの土を踏むことができます。ところが、観光客が増えるにつれて、環境破壊が深刻な問題となり、2007年には危機遺産リストに登録されてしまいました。貴重な自然遺産を守るために様々な制約を設けられ、2010年に危機リストから解除され今にいたります。
諸島域内は、厳正保護区域、原始区域、探訪可能区域、特定利用区域の4つのエリアに分けられています。観光客が自由に歩けるところは極めてまれで、現地のナチュラリストの同行が必要なエリアが大半の面積を占めます。ガラパゴスの島々を歩くには、ナチュラリストをガイドとするツアーに参加しなければなりません。
空港のあるバルトラ島から約500メートルのイタバカ海峡を超えると、諸島の中で最も人口の多いサンタ・クルス島に渡ることができます。島南東部のプエルト・アヨラには、ホテルやレストラン、土産物屋が軒を連ね、訪れた人を温かく迎えてくれます。港の沖合にはガラパゴスの島々に向かう夥しい数の船が浮かんでいます。各々の船にナチュラリストとともに最大16名の旅行者が乗り込み、一つのグループが構成されるのです。
サンタ・クルス島からの島巡りの中でも最も手軽なのが、ノース・セイモア島、サウス・プラザ島へのツアーでしょう。前日までに申込みを済ませておけばツアーの当日の朝、滞在ホテルまで迎えに来てくれます。ツアー参加者のホテルをまわり港に出て、船に乗り込むとツアーが始まります。地平線以外に何も目に入らない海原は解放感に満ち溢れ、赤道直下の厳しい陽射しを浴びながらも全身で受け止める潮風は爽快です。海と空の境界に小さな島が見え始め、その姿が次第に大きくなるにつれて、未知の島への期待が膨らんできます。
訪れる島に接岸できる岩場があれば船から直接上陸することができますが、遠浅の浜辺に上陸する場合には沖合に船を停泊させゴムボートで浜辺にウエットランディングすることになります。人の手が全く入らない島の土を踏みしめれば、一つの島を独り占めしたような快感が全身に漲ってくるようです。
ツアー参加者全員の上陸が終わると、ナチュラリストのガイドによる島歩きです。島誕生以来の自然が残された環境は、様々な珍しい動物の楽園です。ガイドの指さす方向には、必ず日本では見られない光景が広がります。各々の動物にとって孤島は決して恵まれた環境とは言えません。厳しい自然の中で逞しく命を育み続ける動物たちに生命の尊さを再認識させられます。
ガラパゴスの島々へのツアーは、プエルト・アヨラなどに並ぶ旅行社で簡単に申し込むことができます。でも、万が一のこともあるので旅行前に日本国内にある中南米旅行をメインにサポートする旅行社で予約を済ませておくのが無難です。