今回はエジプトに来たら絶対見たい「スフィンクス」。
河岸神殿の奥から緩やかなスロープを登ると、「スフィンクス」の姿が現れます。
「スフィンクス」は、鼻と顎鬚がありません。鼻はいつ無くなったのか、はっきりと分かっていませんが通説では14世紀頃と言われています。顎鬚の方は大英博物館で見られます。
エジプト政府が返還を求めているという品です。海外へ渡ったエジプトの貴重な遺物は他にも沢山ありますが、中でも有名なのが大英博物館所蔵のロゼッタストーン、そしてベルリン・エジプト博物館所蔵ネフェルティティの胸像。現在建設中の大エジプト博物館がオープンした暁には、エジプトに戻ってくるのでしょうか。
よく注意して見ると、スフィンクスの両足の間に石碑が立っています。
スフィンクスの時代からずっと後の第18王朝のファラオ、トトメス4世の石碑です。王子だった頃のトトメス4世が狩りに出た日、疲れてうとうと昼寝をしていると夢にスフィンクスが現れ、砂に埋まった自分を掘り出すならば王となるだろう、というお告げを聞きました。その通り砂を掘るとスフィンクスが出てきた、という物語が刻まれています。実はトトメス4世は正当な王位継承者ではなかったために神のお告げを借りて自分の王位継承を正当化しようとした、と言われています。
スフィンクスはその後度々砂に埋もれ、全身が発掘されたのは1926年でした。一枚岩で出来たスフィンクスは、体の一部が石の固まりとなって度々剥がれ落ち損傷は年々広がっていました。損傷を何とか食い止めようと、1980年代の終わりに修復プロジェクトが開始され、体の表面や首、足元をモルタルや新しい石灰岩で覆う工事が続けられてきました。現在のスフィンクスは足元や胴体の下部が新しい石で覆われています。
ピラミッドエリアの管理については、ゴミ箱の設置やラクダ引きのライセンス化等、最近目に見えて進歩しました。人気のない女王のピラミッド周辺で見かけた赤いつなぎのおじさん。見ると何かを集中的に、黙々と集めています。
あのちりとりに集めているのは一体?
「ラクダの糞です。」
最後に、アハメッドさんにとってピラミッドとは何なのか、聞いてみました。
「もちろんピラミッドはエジプトの誇りですが、それだけでは無く、人類の誇りです。ピラミッドを見た時、人間の意志の力が無限であることを感じます。あれだけ見事なプロポーションの、巨大な建造物を作ったのは、強制労働させられた奴隷ではありません。神として崇める王のために働いた労働者であり、それを指揮した高官、技術者たちです。彼らの意志があのピラミッドを世に生み出したのです。」
初めてピラミッドの前に立った時、あなたは何を感じるでしょうか。写真からは想像もつかなかった圧倒的な巨大さに言葉を失うかもしれません。4500年という時を超え、創建当時の様子をイメージする事が出来るかも知れません。見る者にいつも何かを語りかけてくれるピラミッド。何を感じ取るかは人それぞれ。どうぞご自身の五感でピラミッドを体験して下さい。
アハメッド・ムスタファ
1976年生まれカイロ出身・カイロ大学文学部日本語文化学科卒。大学時代の論文テーマは『世界大戦が日本文学に与えた影響』主に安岡章太郎の著作を研究。1998年より日本語ガイドとして活躍中、1児の父。