アイスランドってどこにあるかご存知ですか?イギリスの横ではありません、それはアイルランドです。アイスランドは、スカンジナビア半島の西、北極圏に近い位置にあります。アイスランドという名前だけに、氷に閉ざされた極寒の世界と思われるかもしれませんが、メキシコ暖流の影響でそれほど寒くなく、夏の日中は半袖でもすごせるぐらい温かくなります。もちろん、冬は寒いのですが、日本の秋田と同じぐらいの気候と言われています。
その昔、この地にバイキングが入植した際、後から来る人々にその土地を取られないように、極寒の島をグリーンランドと名付け、比較的暖かいこの島をアイスランドと名付けて惑わせたと言われています。
さて、今回はアイスランドの大自然を感じられる定番の観光スポット「ゴールデンサークル」を紹介します。
「ゴールデンサークル」とは、首都レイキャヴィークから車で1時間〜1時間半ほどで行けるアイスランドの自然を満喫できる観光スポットの総称です。レイキャヴィークを出発し、ゴールデンサークルを巡る様々なバスツアーが毎日催行されています(日本語のツアーはありません)。どのツアーでも必ず立ち寄る、ゴールデンサークルの目玉と言える3つのスポットを順にご紹介します。
まずは、シンクベトリル国立公園です。地球の割れ目(ギャウ)と呼ばれている、北米プレートとユーラシアプレートの分かれ目が見られる場所として有名です。この地球の割れ目を歩くこともできます。この断崖に挟まれた細い道の片方は北米プレートで、片方はユーラシアプレートです。そして、この道は今でも年に2〜3センチずつ、プレートの移動によって広がっています。
シンクベトリル国立公園は、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。なぜ、自然遺産ではなく、文化遺産なのでしょうか?
実は、930年にこの場所で世界最初の民主議会が開催されたからなのです。なぜこの場所で民主議会が開かれたかというと、周囲の崖に声が反響して演説の声がよく聞こえるからです。バイキングというと、少々野蛮なイメージがしますが、古くから民主的な体制が敷かれていたことが分かります。
地球の割れ目は幾筋も走っており、中には清らかな水を湛えている場所もあります。水は青く透き通り、水底がはっきり見えています。
続いては、グトルフォス滝です。日本語に訳すと黄金の滝です。長さ70メートル、高さ30メートルの巨大な滝です。ラングヨークトル氷河から溶け出た水を源流とする水量の豊富なヴィータウ川は、ずっと平地を流れてきて、この場所で一気に谷底に流れ落ちていきます。写真の左隅に小さく人が写っていますが、ここからこの滝がいかに大きいかお分かりいただけると思います。なお、この人が写っている場所が天然の展望台のような場所なのですが、柵も何もありません。日本なら、がっちり柵で囲まれるところですが、この国では自然の景観を損なうようなものは作りません。十分注意して観光しましょう。
やや緩やかな1段目の滝の後、一気に谷底に水が流れ落ちる場所です。1つ前の写真で手前に写っているところを、真横から眺めたものです。水しぶきを上げて一気に水が流れ落ちる様は圧巻です。
グトルフォス滝の横にある少女を称えるプレートがあります。1907年、イギリスの電力会社がこの地を買収し水力発電所を建設しようとしました。近くの農村の娘シーグリズルは、「この美しい滝が外国に売られてしまうなら、私は滝に身を投げます」と抗議し、この計画を阻止しました。この少女がいなければ、我々はこの絶景を目にすることはできなかったでしょう。
最後に紹介するのは「ゲイシール」です。間欠泉を意味する英語「geyser」の語源となりました。このゲイシールという間欠泉、以前は70メートルの高さまで熱水を噴き上げていたのですが、現在は1日2回程度しか吹き上がらず高さも30メートルほどになっています。現在の主役は、ゲイシールの横にある「ストロックル」という間欠泉で、約5分に1回、30メートルの高さまで熱水が吹き上がります。
写真は、吹き上がる寸前にヒスイの珠のように熱水が盛り上る瞬間です。
そして、一気に水柱があがります。この水柱の高さは、毎回違います。30メートル以上吹き上がることもあれば、湯気だけが立ち上り水がほとんど出ない不発のような噴出もあります。ちょっと時間を取って、何度か噴出を待ちたいところです。写真を撮る場合は連写モードにして噴出を待ちましょう。
間欠泉の周辺は、あちらこちらから熱水が湧きだしています。美しい青い池ができている場所もあります。この周辺はボードウォークが整備されており、それ以外の場所でも柵があり歩ける場所が決まっています。柵やボードウォークの外側を歩くと、熱水が湧いている場所に足を突っ込んでしまい火傷をする危険があります。
アイスランドの定番観光コース「ゴールデンサークル」をご紹介してきましたが、いかがでしたか?定番観光コースといっても、ありきたりの市内観光とはわけが違います。初めて訪れると、地球の割れ目、平地から突然谷底に流れ落ちる巨大な滝、大迫力の間欠泉と、今まで見たこともない風景に圧倒されることでしょう。アイスランドには、こういった自然の雄大さを感じさせる場所が数多く存在します。
日本からアイスランドへは、コペンハーゲン、ヘルシンキ、ロンドンなどを経由して、待ち合わせ時間も合わせると15時間以上かかります。簡単には行けない国ですが、行くだけの価値は十分あります。
今後も、アイスランドの魅力をお伝えしていきたいと思います。
阿部 吾郎
24年間旅行会社に勤務した後、2013年に独立し「トラベルガイド株式会社」を設立。「人がそこに行きたくなる写真」をテーマに国内外で写真撮影を行っている。同社が運営するマレーシアの旅行情報サイト、トラベルガイド・マレーシアにも自身で撮影した写真が多数使われている。その他、旅行写真素材の販売、旅行記事の執筆、旅行会社へのコンサルティングなどを手掛る。最近はマレーシアに年4~5回程度渡航。その他、旅行会社時代の経験も含め得意な方面は、台湾、香港、マカオ、シンガポール、アイスランドなど。