アンデス山脈の高地に築かれたマチュピチュには、クスコまたはオリャンタイタンボからペルーレイルなどの列車を利用して訪れるのが最も一般的です。遺跡群はウルバンバ渓谷に沿った尾根に並び立ちますが、麓には古くからアグアス・カリエンテス村と呼ばれる集落が広がっています。現在では約3000人の人々が暮らし、大半が観光関係の仕事に携わっています。
マチュピチュ駅に到着しゲートを出て最初に出迎えてくれるのは、アンデスの民芸品の山です。駅舎から数十メートル離れたアグアス・カリエンテス川までのエリアにぎっしりと土産物屋が詰まっています。駅舎とマーケットが直結しているので、知らず知らずの内にマーケットの中に迷い込んでしまうわけです。
簡素なトタン屋根の下に、露店がひしめきあう空間にはアンデスの土の香りが漲っています。狭い通路の両側に似通った店が隙間なく並んでいるので、店頭の品物ばかりに気をとられていると迷子になってしまいそうです。
どの店にもカラフルなハンドメイドの商品が山積みにされています。セーターやストール、バッグなどの服飾類、タペストリーやランチョンマットなどの室内装飾品、壺やカップなどの台所用品、縫いぐるみなど、ありとあらゆる日用雑貨が揃っています。南米大陸の高地で生活する人々が身近な素材を巧みに活かしているのです。素朴なものから手作りでしかできないような複雑なデザインまで、アンデスの人々の知恵と美意識が溢れています。マーケットを一回りしている内に、鞄の中はマチュピチュの民芸品で溢れそうになってしまいます。
ところが、ほとんどの商品には値札がついていません。欲しいものがあれば値段を聞いてみることから買物が始まります。定価のない品物を買うわけですから、値段の交渉が不可欠です。交渉術を磨いて最大限のコストダウンに挑戦するわけです。それには話術ばかりでなく、品定めをする能力も必要となります。アルパカの毛を使った商品でも純毛100パーセントではないものも多いのです。商品の価値を正確に見極めながら、買値を決めることが重要なポイントといえるでしょう。
支払いの方法についてもクレジットカードのステッカーを貼っている店もかなりありますが、それとは無関係に現金払いしか受けつけてくれないところもあります。価格から支払方法まで最適な条件で買物をすることは難しいかもしれませんが、逆にこれが海外でのショッピングの醍醐味と言えるかもしれません。
迷路のようなマーケットには50前後の店がひしめいています。ウインドウ・ショッピングをするだけでも、アンデスの雰囲気を充分に感じとることができます。土産物を買わなくても、必ずや面白い土産話のネタを数多く仕入れることができるでしょう。
マーケットを出て清流が流れるアグアス・カリエンテス川を超えれば、マチュピチュの集落です。市庁舎が面して建つアルマス広場を中心にして、ホテルやレストラン、カフェ、土産物屋が街並を作っています。