ルイス・キャロルが著した「不思議の国のアリス」は、今なお世界中で愛されていますね。特に今年は出版されてから150周年を迎えるため、首都ロンドンや彼が数学者として活躍したオックスフォードを中心に、アリスの世界をテーマにした様々なイベントが開催される予定。これからも益々、アリス人気は続きそうです。
では、この奇妙な魅力にあふれた物語を書いたルイス・キャロルって、一体どんな人だったのでしょう?彼が生まれ子供時代を過ごしたデアズベリーに、その足跡をたどる事ができますよ。
何故なら彼、本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンは、ここの牧師館で生まれたからなんです。典型的な中産階級だったドジソン家は代々、職業ならば聖職者か軍人というお家柄。彼の父親も、この教会で牧師をやっていました。
後にルイス・キャロルというペンネームを持つ事になる少年チャールズは、11歳になるまでここで暮らしていたのです。
その後は父の赴任に伴ってヨークシャーに移転後、彼は全寮制ラグビー校で教育を受けました。当時から数学の才覚を嘱望されていて、周囲の期待を裏切ることなくオックスフォード大学クライスト・チャーチ・カレッジを首席卒業し同校の数学講師になりました。
また、趣味から始めた写真にも凝って、後々には写真家としての副業もしていたほど情熱を注ぎました。上流・中流の社交界お歴々の写真をビジネスとして撮るかたわら、趣味では少女をモデルにしたロマンチックで物語性のある写真を多く残しています。
写真のモデルにした少女の多くは、教授仲間の娘さん。特にお気に入りだったのはアレクサンドラ・キッチンや、アリス・リデル。そう、この少女アリスに語った創作話を元に執筆したものが、「不思議の国のアリス」や一連の著作の始まりです。
そんなチャールズ・ドジソン(=ルイス・キャロル)の生地だったオール・セインツ教会には、彼に捧げるメモリアルとして1935年に「アリス・ウィンドウ」と呼ばれるステンドグラスが完成しました。製作したのは著名なステンド・グラス作家、ジェフリー・ウェブ。
ひねったブラック・ユーモアや自虐ギャグも多い、ルイス・キャロル。羽のない鳥ドードーは、吃音(どもり)があって自分の名前を「ドドドド・・・ドジソン」と言ってしまう彼自身に突っ込みを入れてドードーになぞらえて。
時計を見ながら「大変だ大変だ!遅れてしまうぞ〜」ってアタフタと走るウサギは、几帳面だった聖職者の父親を揶揄したんだそうですよ。笑
教会に隣接した別館は、「ルイス・キャロル・センター」として建てられたもの。彼に関する資料が並んでいて、往年のファンだけでなく学校の課外授業で訪れる少年少女にも分りやすい展示となっています。
「カワイイ」だけじゃなく、かなり不条理でダークな可笑しさのある、「不思議の国のアリス」。それは今も英国人に愛されているブラック・ユーモアとも、大いに共通しています。
教会の一角には、アリス満載のお土産コーナーもありました。ボランティアの教会信者さんたちが店番をしてて、お値段も手頃。
数学を愛し、少女達をこよなく愛し、独自の才能とユーモア感覚で世界を魅了したルイス・キャロル。
「不思議の国のアリス」を気に入ったヴィクトリア女王から「もっと他の本も読みたい」とご所望されて、何と本来の専門である数学の著作を贈って女王を面食らわせたという逸話もある(笑)、どこまで計算づくでどこまで天然なんだか?異才というのは、彼みたいな人の事なのでしょうね。
情緒豊かで素敵な街並みのチェシャーや、フットボールで有名なマンチェスターからも、日帰りで行けるデアズベリー。アリス・ファンならば一度は訪れてみたい、小さな村の小さな教会なのです。
【データ】
オール・セインツ・チャーチ(All Saints Church)
住所:All Saints Church Daresbury, Daresbury Lane, Daresbury, Cheshire WA4 4AE
Tel: 01925 740 348
URL: https://daresburycofe.org.uk/
開館時間:週7日午前10時〜夕方まで(閉館時間は日によって多少変更あり)
追加情報:交通手段はドライブのみ。教会の駐車場を利用できます。
小野 雅子
ロンドン西郊外に住む会社員、職場はヒースロー空港周辺です。在英20年以上の経験値を発揮して、初めてイギリスへいらっしゃる方にも興味深く分かりやすいロンドン観光&生活ガイドとしてお役に立てれば…と思います。個人ブログ「ロンパラ!」はこちら♪