オールドタウンVSニュータウン
3月末に訪れた仁川(インチョン)旅の第3弾。今回は、新旧の仁川を感じられるおススメスポットをご紹介します。その前に仁川市の町の発展の経緯を少しだけご紹介しますね。
今回仁川を訪れてみて感じたのは、この町にははっきりと区別できる新旧の顔があるということでした。仁川は、先史時代から人が住む古い町ですが、黄海に面した港湾都市として発展し始めたのは1883年のこと。当時は「済物浦(チェムルポ)」と呼ばれていたそうです。
前回ご紹介した「仁川チャイナタウン」も、中国との交易がきっかけとなりできた町ですし、日本家屋や欧米住宅といった租界地区があるのも、港町ならではの町の魅力の一つになっています。
今の仁川市は、こういった古い街並みが残るオールドタウンがある一方、近代的な超高層ビルが立ち並ぶ新都市「松島(ソンド)国際都市」と、江華島をはじめとする自然豊かな大小の島々が広がる農村部で構成されています。
いにしえの仁川が残るペダリ歴史文化村
いにしえの仁川を見てみたい人にお薦めのスポットの一つが「ペダリ歴史文化村」です。「ペ」は、船のこと。「ダリ」は、船をつける桟橋のことだそうですが、日本統治時代に日本人に生活圏を奪われた朝鮮の人々が暮らしていたエリアです。日本人の私にも、どこか懐かしいような、日本の昭和の時代の面影が漂います。かつてこの場所には小さな町工場がたくさんあり、そこで働く労働者たちが集まっていたということです。
韓国では、かつての貧しい地域は、再開発でどんどん壊され、新しい町に再生されていますので、昔ながらの家と小さな路地が入り組むこの町が、歴史村として保存されたのは本当に貴重です。保存が決まった2007年頃からは、芸術家たちが移り住み、彼らの文化活動の場として、裏道の壁に絵が描かれるようになりました。
途中、「ドラマや映画にも使えそう!」と思いながら歩いていたところ、なんと撮影中のドラマに遭遇。ちょうどいたのは、10年以上前に見たイ・ビョンホン主演のドラマ『オールイン』でやくざの親分サンドゥを演じていた俳優さん(名前は忘れましたが、顔は知っている!)でした。
私たちはそれほど時間がなかったため、1960年〜70年代にあった「タルトンネ」と呼ばれる貧しい人たちが住んでいた集落や、ペダリ古本屋通り、1907年に仁川で初めて作られた「仁川昌栄初等学校」周辺など、その一部を歩いただけですが、町の雰囲気は十分に体感できました。もう少し時間があれば、高台の跡に建設された「水道局山タルトンネ博物館」も見たかったです。
こういった貧しい地域を文化村、歴史村として再生させる計画は、釜山の甘川洞文化村などでも見ましたが、仁川市でもいくつかの町で成功しています。今後保存活動がもっと活発化すれば、こういった古い家屋を使っておしゃれなカフェとかもできそうで、楽しみです。
【関連施設】
★ペダリ歴史文化村(배다리역사문화마을)
住所:仁川市東区金谷洞 인천시 동구 금곡동
最寄駅:1号線東仁川駅4番出口から徒歩8分
★仁川昌栄初等学校(인천창영초등학교)
住所:仁川市東区牛角路15番キル16(昌栄洞30)인천시 동구 우각로15번길 16(창영동 30) 電話:032-765-4332 ※見学は要予約
最寄駅:1号線東仁川駅4番出口から徒歩12分、または桃源駅3番出口から徒歩8分
松島国際都市にオープンしたNC CUBE キャナルウォーク
現在のように仁川市が大きく変化したのは、2001年に仁川国際空港が開港したのがきっかけです。この国際空港建設は、2002年の日韓共催ワールドカップに合わせたビッグプロジェクトでしたが、この空港開港で、仁川は釜山&鎮海自由貿易地域とともに、自由貿易地域に指定されます。これが、高層ビルが林立する「韓国のドバイ」と呼ばれる松島(ソンド)地区の新都市建設につながっています。
私たちが訪れた「NC CUBE キャナルウォーク」は、仁川市で最も新しいエリア、松島(ソンド)国際都市の中心部にあります。総面積約5万5000?。全長約800mというショッピングテーマパーク。「キャナルウォーク」の名前の通り、小さな運河をはさみ、100以上の店舗が軒を連ねます。
大型スーパー「KIM'S CLUB」を運営するNC百貨店系列のプレミアムアウトレット「NC CUBE キャナルウォーク」を中心に、グローバルブランドやスポーツ・アウトドアブランド、韓国内外のファッションブランド、レストラン、カフェなどが入っていますので、ソウルへ行かなくても、ショッピングを楽しめる環境です。
実際に訪れているのは、アラサー、アラフォー世代の女性たち。週末にはカップルやファミリーで賑わうそうです。仁川地下鉄1号線セントラルパーク駅から徒歩7分ですので、アクセスも良いですね。
【関連情報】
★NC CUBE キャナルウォーク
住所:仁川広域市 延寿区 アートセンター大路 87(松島洞 17-1)인천광역시 연수구 아트센터대로 87(송도동 17-1)
営: 10時30分〜22時 休: 年中無休
最寄駅:仁川地下鉄1号線セントラルパーク駅から徒歩7分
外国人観光客がこぞって訪れる超穴場の新起市場
ショッピングといっても、庶民的なところが好きという人には市場がおススメです。ソウルにもたくさんの市場がありますが、仁川の「新起(シンギ)市場」は値段がソウルと比べるとかなり割安。しかも、外国人観光客だけに渡される「新起通宝」なるものがあります。この通貨があるおかげで、「市場の買物は言葉もできないし、ちょっと気がひける」という外国人観光客にも安心感があり、気軽に買い物が楽しめる雰囲気も魅力です。
じつはこの「新起市場」、1980年代には地元の人たちの台所として賑わっていました。ところが2000年代初めに大型マートとデパートが周囲にでき、一時期経営危機に陥ります。廃れずにすんだのは、商店街や市場の人たちの努力のおかげで、今では外国人観光客の集客などが成功し、見事に再生しました。
現在は、週末になると2万人を超える国内外の観光客が集まり、地元の人だけが集まる伝統市場とはちょっと違いますが、野菜や果物、肉や魚などの生鮮食品や洋服や雑貨など、150店舗以上の店が集まっており、雰囲気は地元の市場とまったく変わらない風情です。
ところで、外国人観光客に渡される「新起通宝」とはどんな貨幣だと思いますか?この貨幣は、この市場だけで使えるもので、1個500ウォン。外国人観光客には6枚ずつ無料で渡しています。
中には、使わずに記念品として持ち帰るほど人もいるみたいですが、私は、ちょうど買いたかったタイツを購入するのに使いました。同行のFAMツアーの面々は、屋台グルメを食べるのに使っていたみたいで、やっぱり食べ物に使う方が使い方としては面白かったかもしれません。
場所は地下鉄1号線朱安駅から徒歩30分とはっきり言って遠いです。「個人で行くのはちょっと心配」という人には、仁川国際空港のトランジットツアーなどがオススメです。
こういった外国人観光客が安心して買い物ができる伝統市場は、今後も各地で増えそうな気配。要注目ですね。
【関連施設】
★新起市場(신기시장)
住所:仁川市南区弥鄒忽大路547(朱安洞1311-17)인천시 남구 미추홀대로 547(주안동 1311-17) 電話(代表):032-865-5424 開:7時〜22時
最寄駅:1号線朱安駅1番出口から車で12分
木谷 朋子
『留学ジャーナル』の編集者を経て1989年より2年間イギリスへ留学。帰国後はイギリスを始め、ヨーロッパ各地やアジア、オーストラリアなど、世界各地を取材。海外の旅文化や最新の旅行情報、語学、留学をテーマに幅広い分野で執筆活動を続ける。韓国関連の著作:『Live from Seoul』(ジャパンタイムズ)、『人気韓国ドラマロケ地めぐり』(学研)ほか、『るるぶ韓国』、『るるぶソウル』(JTBパブリッシング)では『韓流ブック』を担当。