道庁移転で注目度の高まるグルメ都市にて朝食探しのコツを実践
みなさん、旅行中の朝ごはんって、どうしていますか? 食べるか、食べないかという大前提に始まり、パンとコーヒーで軽めにとか、朝からガッツリとか、むしろせっかく旅に出たんだから朝からでも1杯やっちゃうとか、いろいろな選択肢があるかと思います。
もちろん人それぞれですから、誰にとやかく言う話でもないのですが、個人的には韓国に出かけて朝ごはんを食べないのは、もったいないことだなぁと思っています。それも地方に出たときはなおさらですね。韓国は地方ごとの朝食が充実しているので、探してみると意外な名物に出合えたりもするのです。
今回はそんな美味しい朝食との出合い方をテーマに、最近気に入っている町のひとつとして洪城(ホンソン)を紹介します。ソウルからバスに乗って南へ2時間弱。あるいは鉄道に乗っても同程度。日本人観光客にはまだほとんど知られていませんが、韓国では2012年末に道庁が移転してきたことで注目度アップ。忠清南道エリアにおける経済や地方自治の中心としての発展が期待されている町です。
特に最近はコウライエビや、トリガイといった特産品が有名になり、シーズンになると大勢の人たちが訪れるグルメな町でもあったりします(「エビを食べたらトリガイも食べたくなる漁港〜ただし同時には不可」参照)。どころか魚介のみならず、洪城韓牛(ホンソンハヌ)というブランド牛の生産地でもあり、美味しいもの好きな方には、ぜひ1度足を運んで欲しい町のひとつです。
伝統市場に立ち並ぶ牛のアノ部位を煮込んだスープ店
地方に出て美味しい朝食に出合うためのコツ、その1は「市場に足を運ぶ」です。どの町にもたいていローカルな市場があり、そこでは早朝から働く人のために、朝ごはんを提供する飲食店が営業しています。
洪城の場合だと洪城伝統市場がおすすめ。牛肉の美味しい地域とあって、ソモリクッパプという牛の頭を煮込んだスープが名物となっており、市場の一角に専門店が集まっています。
牛の頭と聞くとギョッとするかもしれませんが、実際はダシとして煮込まれているだけなので、頭とそのまま対面する訳ではありません。よく煮込んでうま味の溶け出た白濁スープに、刻みネギをたっぷり散らし、その合間にちらりと見えているのがスライスした牛頭肉です。ゼラチン質の部位を含んでいるため、クニッとした特有の食感を楽しめます。
<物件データ>
店名:ホンソンチプ(홍성집)
住所:忠清南道洪城郡洪城邑義士路43番キル27-3(大校里400-14)
住所:충청남도 홍성군 홍성읍 의사로43번길 27-3(대교리 400-14)
電話:041-632-0723
ローカルバスで20分、百済時代に創建された名刹へ
地方に出て美味しい朝食に出合うためのコツ、その2は「有名な寺を探す」です。洪城のバスターミナルから20分ほどバスに乗ると、修徳寺(スドクサ)というお寺に着きます。百済時代の6世紀に創建された由緒あるお寺で、1308年に建てられた大雄殿(本殿)は韓国でもっとも古い木造建築のひとつとして国宝49号に指定されています。
こちらは高麗時代に建てられた大雄殿前の三層石塔。すべてのお寺に当てはまる訳ではないのですが、観光客のたくさん訪れる有名なところであれば、参道にたくさんの飲食店が並んでいます。お寺の朝は早いので、山菜料理などを朝から提供しています。
朝のきれいな空気の中、まだ人もまばらな境内をひとしきり歩き、おなかを空かせてから食べる食事はひとしおですよね。
参道の山菜料理店でツルニンジン入りビビンバを賞味
さて、お待ちかねの朝食。修徳寺の参道にはたくさんのお店が並んでいますが、いずれのお店も地元でとれた山菜定食、山菜ビビンバなどを名物としています。
写真の料理はトドッピビムパプ(ツルニンジン入りのビビンバ)。ツルニンジンは高麗人参にも似た根菜で、ジャキッとした食感と、特有のほろ苦さを持ち味としています。よく叩いて柔らかくしたツルニンジンを薬味ダレで和え、他の山菜、野菜、卵などとともに、ごはんとよく混ぜ合わせていただきます。
嬉しいのはメインのビビンバに加えて、たくさんの山菜料理が並ぶことですね。ドングリのでんぷんを固めたトトリムクには、セバルナムル(和名はウシオツメクサ)という極細の山菜が混ざって独特の舌触りを演出したり。
テンジャンチゲ(味噌チゲ)にはタニシが入っていました。そのほかドングリ粉を用いたチヂミや、セバルナムルや、ピドゥムナムル(和名はヒユ)の和え物など、珍しい食材がたくさん使われています。これで1万ウォン(約1100円)也。
このほか、地方に出て美味しい朝食に出合うためのコツ、その3としてもっとも基本的な「地元の人に尋ねる」を加えれば完璧。地方での朝食はなかなか情報も少なくたいへんですが、現地でアンテナを立てれば、思い出深い食事に出合えるはずです。
<物件データ>
店名:修徳食堂(수덕식당)
住所:忠清南道礼山郡徳山面修徳寺アンキル33-5(斜川里25-40)
住所:충청남도 예산군 덕산면 수덕사안길 33-5(사천리 25-40)
電話:041-337-6019
八田 靖史
1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年より執筆活動を開始し、最近は講演や、企業のアドバイザー、グルメツアーのプロデュースも行う。著書に『魅力探求!韓国料理』(小学館)、『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品!ぶっちぎり108料理』(三五館)ほか多数。ウェブサイト「韓食生活」を運営。2015年より慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。