街の真ん中を平渓線の線路が横切る十分老街。とても不思議な光景なのですが、どこか懐かしさも感じる風景です。この平渓線は旧日本軍が敷いたものを今でもそのまま使っているのです。手動切り替えのポイントやすれ違う際にタブレットと呼ばれるわっかを交換するなど懐かしいものが見られます。平渓線は三貂嶺から菁桐までの12.9kmを走り、その間に7つの駅がありますが、この十分の周辺が最大の見どころと言えるでしょう。
電車は1時間に1本か2本程度しか走っていません。線路の上を歩いてもまったく問題なしです。電車が来ても警笛で知らせてくれますし、人がいる前提でゆっくり走ります。
とても小さな街ですが、線路沿いに様々なお店が並んでいます。
十分で人気のアトラクションが天燈上げです。小さな熱気球に願い事を書いて飛ばします。映画「レッドクリフ」をご覧になった方は見覚えがあるでしょう。諸葛孔明が発明したと言われており、「孔明燈」とも呼ばれています。旧正月には、この点燈を一斉に飛ばすイベントが、平渓駅近くの広場で行われます。
風が強い日などは、どこまでも飛んでいきます。火事にならないかちょっと心配です。しかし、実際に火事になったという話は聞いたことがありません。
十分老街にこんなお店がありました。店先にも、店内にもよくわからないものがたくさん並んでいます。
このごちゃごちゃしたものたちは、売り物ではありません。このお店はラムネ屋さんで、どうもラムネ以外はすべて飾りのようです。ラムネを買うと写真を撮らせてくれます。
十分駅は、老街のすぐ近くにあります。
平渓線は単線です。上下の電車は十分駅ですれ違います。タブレットの受け渡しも行われますので、じっくり観察してみてください。
十分駅から老街に電車が入って行きます。
十分駅から線路を渡った向かいに「静安橋」という基隆川にかかる大きな吊橋があります。対岸を走る道路の方に渡ることができます。
かなりの高さでスリル満点です。見落としてしまいそうですが、十分に行ったら是非渡ってみてください。
十分には老街だけでなく、もうひとつ見どころがあります。台湾のナイアガラ「儒分大瀑布」です。十分駅からですと、徒歩で20分ぐらいかかります。途中に鉄橋があり、並行して人が渡るための「観瀑吊橋」がかかっています。電車を撮影する絶好のスポットです。
吊橋を渡ったら、線路沿いの歩道を歩いて行きます。
こんな記念撮影もありです!
この看板が見えたら到着です。
こちらが十分大瀑布の入口です。ちょっと駅の改札みたいな感じです。ここに電車を停めてくれると便利なのですが・・・。
施設の安全性などをめぐって、何度か閉鎖され以前は入場料も徴収されていましたが、現在は無料で開放されています。(変更される可能性もあります。)
こちらが「十分大瀑布」です。「台湾のナイアガラ」はちょっと言い過ぎのような気もしますが、形は少し似ています。スケールはそれほど大きくありませんが、緑に囲まれた、美しい滝であることは間違いありません。
この写真は、7月に撮影したものですが、かなり水が少ない状態です。
こちらは5月に撮影したものです。梅雨の時期で水量が増えており、かなり迫力があります。このように訪れる時期によって滝の様子がかなり違います。
十分老街と十分大瀑布へは、台北から列車を乗り継いで行くことができます。また、旅行会社のオプショナルツアーに参加すれば、車で案内してもらえます。平渓線の体験乗車が付いているツアーもあります。
台北からの日帰り旅行といえば九份が人気ですが、十分もおすすめの観光スポットです。週末は、地元の人々でかなり込み合いますので、できれば平日に行かれることをおすすめします。
阿部 吾郎
24年間旅行会社に勤務した後、2013年に独立し「トラベルガイド株式会社」を設立。「人がそこに行きたくなる写真」をテーマに国内外で写真撮影を行っている。同社が運営するマレーシアの旅行情報サイト、トラベルガイド・マレーシアにも自身で撮影した写真が多数使われている。その他、旅行写真素材の販売、旅行記事の執筆、旅行会社へのコンサルティングなどを手掛る。最近はマレーシアに年4~5回程度渡航。その他、旅行会社時代の経験も含め得意な方面は、台湾、香港、マカオ、シンガポール、アイスランドなど。