カメラを携えて行ったら予想以上に大歓待された魚市場
ちょっとお兄さん、安くするから買っていきなよ。え、写真を撮りにきたの? そうか、写真作家(韓国ではこういう言い方をよくする)なんだね。どこから来たの? 日本? それじゃあ、もっとキレイに撮ってもらわなきゃ。ちょっと待ってて...と、店のお母さんが魚を並べ直してくれたのには感激しました。これまで韓国のさまざまな市場を訪ねてきましたが、ここは群を抜くほどのフレンドリー市場でしたね。
ぜひみなさん、「仁川総合魚市場」を覚えてください。
空港の町としても有名な仁川(インチョン)は、韓国有数の漁港でもあり、美味しい魚介が山ほど食べられる地域でもあります。
どうですか、このずらり具合。足を運んだのは4月はじめでしたが、それを象徴するかのように、最上段でマナガツオが目立っています。韓国ではこのマナガツオを刺身にしたり、辛い鍋料理のチゲにしたり。仁川の初夏を代表する旬魚で、5〜6月頃がもっとも美味しいとされています。
そのほか天然のマダイや、サワラ、サバ、タチウオ、アンコウの姿も見えますね。
こちらのお姉さんが見せてくれたのは春が旬のイイダコ。3月から4月にかけてはメスが卵を持つので、仁川をはじめとした西海岸の各地でイイダコ料理が食べられます。
<物件データ>
店名:仁川総合魚市場(인천종합어시장)
住所:仁川市中区沿岸埠頭路33番キル37(港洞7街27-69)
住所:인천시 중구 연안부두로33번길 37(항동7가 27-69)
電話:032-888-4241
なぜか市場内にある旬の魚介料理を専門とする学生食堂
市場内には飲食店もあります。地元の方に教えてもらった、いちばんの古株店というのがこちらの「学生食堂(ハクセンシクタン)」。名前だけ聞くと、どこか大学構内にある学生向け食堂に思えますが、実際は学校とは無縁の海鮮料理店です。なんでも、創業初代のお客さんに対する声かけが、みな「学生さん!」だったとか。それがいつの間にやら定着し、「学生食堂」と呼ばれるようになったそうです。
ここでは魚介の刺身、鍋料理、炒め物、煮物とひと通り注文できますが、基本的にはその日、市場にあるものを提供するシステム。メニューもありますが、季節や仕入れによっても変わってくるので、まずはおすすめの料理を聞いてみるのがよさそうです。
僕らは旬のチュクミボックム(イイダコ炒め)と...。
カルチジョリム(タチウオの煮付け)を注文。両方ともけっこう刺激的な味付けでしたが、それがまたごはんとよく合って、ハァハァいいながらも夢中で味わいました。
<物件データ>
店名:学生食堂(학생식당)
住所:仁川市中区沿岸埠頭路33番キル37仁川総合魚市場内(港洞7街27-69)
住所:인천시 중구 연안부두로33번길 37(항동7가 27-69, 인천종합어시장)
電話:032-883-4015
漁船から直接買い付けができる超穴場の水産物直販場
こちらは仁川にあるまた別の魚市場。花水埠頭(ファスブドゥ)という地域にある水産物直売所で、ここでは新鮮な魚を漁船から直接卸してもらうことができます。というより、ここに出ている店すべてが漁船の直営なんですね。自分でとった魚しか販売できないというルールになっており、質のよいものを格安で購入することができます。
僕らが足を運んだときは、ちょうど天然ヒラメがおすすめで、それをその場で刺身にしてもらいました。この日の価格は1kg当たり4万ウォン(約4300円)と、それ自体はいい値段とも思えますが、天然であることを考えれば超おトクです。
これ、本当に美味しかったですねぇ。けっこうな量だと思いきや、みんなで争うようにしてつつきました。
<物件データ>
店名:花水埠頭水産物直売所(화수부두 수산물직매장)
住所:仁川市東区花水埠頭路30(花水洞7-443)
住所:인천시 동구 화수부두로 30(화수동 7-443)
電話:032-762-5577
店名:トッキル号(덕길호)
住所:仁川市東区花水埠頭路30花水埠頭水産物直売所B-1、2号(花水洞7-443)
住所:인천시 동구 화수부두로 30 B-1,2호(화수동 7-443, 화수부두 수산물직매장)
電話:010-7751-0902
絶品のすいとんアラ鍋を提供する持ち込み自由の刺身店
その、刺身を持ち込んで食べたのがすぐ近くの「レヒネヤンプニメウンタン」というお店。水産物直売所の中にも簡易的な食事スペースを用意していますが、ゆったり味わうならお店のほうに移動することをおすすめします。
刺身代に追加して1人2000ウォンの持ち込み料が必要になりますが、韓国式の刺身に欠かせない葉野菜や、チョジャン(唐辛子酢味噌)、さまざまな副菜などがついてきます(4人以下、または別の料理を注文した場合は持ち込み料不要)。
ひと通り刺身を堪能したら、最後は名物のスジェビメウンタン。先ほど買った天然ヒラメのアラを、すいとん入りのピリ辛鍋に仕立てていただきます。
これがもうびっくりするほどの絶品。
そりゃ、あれだけ刺身が新鮮だったら、アラだってうまいのは当然ですよね。贅沢にもワタリガニのダシが追加され、野菜の甘味も溶け出たうえに、味噌で味を調えたピリ辛スープが後を引きます。とぅるんとぅるんのすいとんをむさぼるように食べたら、後はもう荒い息とともに胃袋をひたすらさするのみです。
<物件データ>
店名:レヒネヤンプニメウンタン(래희네 양푼이매운탕)
住所:仁川市東区花水埠頭路17-1(花水洞7-10)
住所:인천시 동구 화수부두로 17-1(화수동 7-10)
電話:010-2838-2218
つい先日も、「素通りするには惜しい美食の町〜1軒の新店と2軒の老舗を例に」という記事で書きましたが、仁川という町は本当に美味しいもの三昧。ぜひ空港からソウルへ直行するだけでなく、仁川を目指して美食三昧を楽しんでみてください。
ソウルからのショートトリップにも最適。損しません。絶対。
八田 靖史
1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年より執筆活動を開始し、最近は講演や、企業のアドバイザー、グルメツアーのプロデュースも行う。著書に『魅力探求!韓国料理』(小学館)、『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品!ぶっちぎり108料理』(三五館)ほか多数。ウェブサイト「韓食生活」を運営。2015年より慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。