ルーブル美術館のエキスが詰まったルーブル・ランス「時のギャラリー」

ルーブル美術館のエキスが詰まった「時のギャラリー」in ルーブル・ランス美術館
パリのルーブル美術館の別館のような形で、2012年末フランス北部にオープンしたルーブル・ランス美術館。

パリ以外の美術館では、2014年入館者数ナンバー1
開館二年目にして、年間入場者数は150万人を超えました。フランス国内の美術館の2014年入場者数ランキングでは、第7位。イル・ド・フランス（パリとパリ周辺の地域）以外では、唯一のベスト10入りという快挙です。

ランス（Lens）は、パリからまっすぐ北に200キロメートルほど離れた町で、19世紀から20世紀にかけて、炭鉱の町として知られた場所です。

ルーヴル・ランス美術館は、その炭鉱跡に建てられたものです。設計したのは日本の建築ユニットSANAA。広い敷地に建つ近代的な建築は、上空から見ると目を惹きますが、高層ではないため、地上では、しっくりその場に馴染んでいるように感じます。

珠玉の作品が並ぶ「時のギャラリー」
パリのルーブル美術館という豊かなコレクションをバックに企画される展覧会は、どれも興味深いものですが、私の何よりのお薦めは、「時のギャラリー」と名づけられた常設展。仕切りの一切ない3000平方メートルの広々とした空間に、紀元前3500年から19世紀産業革命までの、それぞれの時代・地域の様々な種類の美術品が、時間軸に沿って並べられています。

この並べ方により、時間軸に沿った変化・つながりはもとより、地域的つながり、また絵画と陶器と彫刻のような種類の異なる作品のつながりも確かめながら、鑑賞することができます。

パリのルーブルくらい大きくなると、時代や地域、美術の種類で分類されるため、遠く離れた場所に展示されてしまう作品たちも、ここ、ルーブル・ランスでは、並べて眺めることができるのです。

実際、古代メソポタミアも古代ペルシアも、古代ギリシアや古代エジプトと接触したわけですし、中世から16，17世紀にかけて、多くの芸術家たちは、ミケランジェロの例を挙げるまでもなく、絵も描けば、彫刻もするというようにマルチな才能を発揮していたわけですから、本来の芸術は、細分化されているものではないのです。

美術史、ヨーロッパ史の勉強にも！
古代から始まり、中世、ルネッサンス、バロック、古典主義...と続く作品たちは、どれも珠玉の作ばかり。一つ一つの作品の前で、つい立ち止まって見とれてしまいます。私の印象では、パリ・ルーブルと比べて、作品との距離が近いようで、親密な気分で鑑賞ができるのも嬉しいところ。時代ごとの地図や、当時の歴史が簡潔に書いてあるのも、鑑賞の助けになります。フランス語のほか、英語、オランダ語で記述がされています。

「時のギャラリー」は、毎年その一部がローテーションで変わります。2015年も20作品ばかりが新しく加わりました。中でも私の目を惹いたのは、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール（Georges de la Tour）の『大工、聖ヨセフ（Saint Joseph Charpentier）』。ド・ラ・トゥールの特徴とも言える光と影の表現を間近で見て、息も止まるほど見惚れました。

他にも、ボッティチェリ、ラファエル、エル・グレコ、ジャンボローニャ、レンブラントらの名画や彫刻が並び、一つ一つに感嘆してしまい、なかなか次へ進めないほど。

一日で西欧美術を一通り堪能したいという人にはぴったりの美術館。しかも、広く知ってもらうためにという理由で、2015年中なら、この「時のギャラリー」は、誰でも入場無料となっています。
ぜひ訪れてみてください。

ルーブル・ランス美術館（Musée du Louvre-Lens）
住所：99 rue Paul Bert 62300 Lens, France
URL：https://www.louvrelens.fr/
開館時間：10時〜18時（入場は17 :15まで）。9月から6月の毎月第1金曜は夜22時まで開館。
休館日：1/1, 5/1, 12/25, 毎週火曜日
行き方：フランス国鉄ランス（Lens）駅より無料シャトルバスあり。専用遊歩道を歩けば20分の距離。
パリ北駅からランス駅まで、TGVで約1時間10分。一日7便。€38から。
リール（Lille）駅からランス駅まで、普通電車、30〜45分。一日30便以上。€7から。
フランス国鉄サイト：https://en.oui.sncf/fr/?redirect=yes