江華島は仁川広域市の一部
3月下旬〜4月上旬にかけて、1週間ほど今年最初の韓国取材に行ってきました!前半の2泊3日で訪れた仁川(インチョン)と江華島(カンファド)は、ソウルからとても近いのに、私にとっては盲点だったエリアです。
仁川国際空港があるので、名前だけは知っているという人もいるかもしれませんが、仁川広域市は、ソウル、釜山に次ぐ韓国第3の都市!数字で言うと、現在人口は約290万人。面積は約1051.49㎢。東京都の約半分の広さになりますね。
昨年も、大ヒットドラマ『星から来たあなた』や『ドクター異邦人』のロケ地取材で訪れていた仁川ですが、いつも観光スポットは素通り!今回は、「チャイナタウン」、「松月洞童話村」、「新浦市場」、「新起市場」、「富平地下商店街」、新スポットとして人気急上昇中の「松島国際都市」、ヨーロッパ風の巨大ショッピングモール「エヌ・シー・キューブ・カーネルワーク」など、かなり駆け足ではありましたが、広い仁川市内を見てきました。
その中でも私が心魅かれたのが、韓国で5番目に大きい島「江華島(カンファド)」です。江華島は昔から質の高い高麗人参や薬用ヨモギの産地として知られる有名スポット。美容ライターの友人に「江華島のヨモギは他のヨモギとは違うのよ」と聞いていたこともあり、行く前からワクワク。この世界遺産の島は、島旅ラバーとしても、ここ数年行きたかった場所の一つでした。
【関連情報】
★仁川広域市の観光情報(仁川都市公社)
★江華島の観光情報
古代遺跡と史蹟が残る屋根のない博物館
ソウルの新村からバスで約2時間の距離の江華島ですが、私たちは仁川市内からスタートしたので、1時間弱で到着。最初に訪れたのは「龍興宮(ヨンフングン)」でした。「宮」と名付けられていますが、朝鮮王朝第25代王・哲宗(チョルジョン)(在位1849∼1863)が、王位に就く直前まで住んでいた民家です。王族が住んでいたとは思えないほど質素で小さな家なのは、哲宗が13歳のときに政争に巻き込まれて江華島に流され、農民として過ごしていた場所だからでしょう。32歳で亡くなった哲宗ですが、王位に就いてからも、江華島の生活を懐かしんでいたということです。
その龍興宮の向かい側の小高い丘に建つ「聖公会江華聖堂(ソンゴンフェ・カンファソンダン)」は、韓国ではとても珍しい、西洋建築と韓国伝統建築様式を折衷させた韓国最古の韓屋式聖堂です。英国国教会の拠点として1900年に建立した国家史蹟の一つで、今も聖堂として使われているとか。私たちが訪れたときには閉まっていて、中を見られなかったのが残念です(日曜礼拝時だけ開館)。
さらに島の北部の、「江華支石墓(カンファコインドル)」にも足をのばしました。この史蹟は私がとっても行きたかった場所の一つです。現在江華島には、このような支石墓が120基あるそうですが、形はアイルランドで見たドルメン(支石墓)と驚くほどそっくり。紀元前に造られた支配階級のお墓という点も同じです。この巨石文化は、紀元前にヨーロッパから東アジアまで伝わってきたわけではなく、不思議なことですが、同時発生した説が有力です。
さらに島を北上した私たちは、北朝鮮との国境まで2.3キロの位置にある「DMZ江華平和展望台」を目指しました。日本では板門店が韓国と北朝鮮の国境として有名ですが、江華島の海を隔てた先に見えるのは北朝鮮の黄海北道です。海が国境というわけですが、秋冬の晴れた日には住んでいる北朝鮮の人までくっきり見える近さだそうです。取材当日はあいにく視界が悪く、対岸はうっすらと見えるものの、人の姿を見ることはできず!次回は初冬に行ってみたいと思います。
このような史蹟の多さから「屋根のない博物館」と呼ばれる江華島ですが、高麗時代の都があった場所として有名です。今回は時間がなくて訪れませんでしたが、「高麗宮跡」や「伝燈寺」など、歴史好きとしては観てみたい史蹟がたくさんある見どころの多い島です。
【関連施設】
★龍興宮(용흥궁)
住所:仁川市江華郡江華邑東門アンキル21番キル16-1(官庁里441)
電話:032-933-5091
★聖公会江華聖堂(성공회강화성당)
住所:仁川市江華郡江華邑官庁キル27番キル10(官庁里10)
電話:032-934-6171
※日曜日の礼拝時のみ内部観覧可
★江華支石墓(강화지석묘)
住所:仁川市江華郡河岾面江華大路994-12(富近里317)
電話:032-933-3624(公園観光案内所)
★江華平和展望台(강화평화전망대)
住所:仁川市江華郡両寺面展望台路797(鉄山里11-12)
電話:032-930-7063
江華島が誇る薬用ヨモギと高麗人参
次に訪れたのは、有名な高麗人参センターではなく、高麗人参の栽培地でした。つまり、高麗人参の畑です。江華島の高麗人参は他の土地で採れるものよりもかたくて重量があり、香りが強いのが特徴。高麗人参のサポニンの含有量も高く、煮てもサポニンの濃度が変わらないという質の高い高麗人参と言われています。ちなみに、高麗人参には血液の生成を活発にし、肺の機能を強化する効果とデトックス効果があり、高血圧や糖尿にも効能があります。私も疲労回復のために、疲れたときにエキスを飲みますが、疲労だけでなく、眼精疲労にも効いているようです。
高麗人参畑で収穫までしたのは、何しろ初めての体験でしたが、生産者が高麗人参の生産のために、大変な手間と時間をかけてきたかもわかり、少し値段が高くても、質の高い高麗人参を買わなくては!と改めて思った次第。この栽培所では、体験料1万ウォン(高麗人参1本分付)で収穫体験ができます。事前の予約は必要ですが、旅行者でも気軽に申し込めますので、ぜひ訪れてみて欲しいです。
最後に訪れた「江華獅子足ヨモギ」には、ヨモギを加工生産している工場とショップ、ヨモギ蒸しの体験コーナーがありました。この「獅子足ヨモギ」は江華島で栽培されるヨモギのブランド名です。食用としてよりも薬用として使用されることが多く、薬ヨモギと呼ばれています。通常のヨモギよりも香りが強く、葉が大きくて光沢があり、獅子の足の形に似ているため、この名前が付いたとか。また、一般のヨモギにはある毒素がなく、より高い抗菌力をもつことも科学的に証明されているそうです。
江華島のヨモギについては、1530年に編纂された『新増東国輿地勝覧』にも、第12巻江華都護府の項目に特産品「獅子足艾」との記載があるほか、『世宗実録地理誌』などにも、「江華薬ヨモギは、血液循環や冷え性、胃潰瘍、下痢などの治療の目的で用いられた」と記されていますので、昔からこの島のヨモギが珍重されていたことがわかります。
江華島では、ヨモギのエキスを搾ったものを生薬として服用したり、お灸や、ヨモギ蒸しの素材としても利用しています。私は体験コーナーでヨモギ蒸し体験をしましたが、通常のヨモギ蒸しとは異なり、煙で燻(いぶ)される感じが強く、あまり温まりませんでした。足だけのヨモギ蒸しを体験した人の方が快適だったようで、全身のヨモギ蒸しはちょっと期待外れだったかも。今後に期待ですね。
帰りがけに、ショップで販売されていた石鹸とヨモギ茶を購入しましたが、一緒に行ったメンバーの中には、ヨモギの葉やヨモギ枕を購入した人もいました。ヨモギ茶は飲みやすくて、帰国してからも大切に飲んでいます。
また、昼食時には、この獅子足ヨモギを飼料として育てた韓牛を提供する飲食店で、韓牛の焼肉をいただきました。残念ながら肉からヨモギの香りや味はしませんでしたが、ヨモギを食べることで通常の韓牛より肉質が軟らかく旨みが高まるそうです。
それではなぜ、江華島で高品質な高麗人参やヨモギが採れるのでしょう?それは、「この島の潮気を含んだ風」と、「海を渡って運ばれてくる霧の湿気」、「植物の自生に最適な砂質黄土(砂の混ざった黄土)の土壌」を合わせ持つ、恵まれた環境のおかげです。高麗人参やヨモギだけでなく、島には自然豊かな環境で育った江華カブや江華米、江華島ブドウ、江華サツマイモなどの名産品があります。カンジャンケジャン(蟹の醤油漬け)や渡り蟹鍋、お刺身など、旬のシーフードも美味しいと評判。グルメにも満足できる島です。
もっとゆっくり江華島を見たいと思いながら島を後にしましたが、すでに次は高麗人参センターや江華風物市場、島に点在する史蹟を中心に見てみたいと新たな旅の計画も妄想中。ソウルから日帰り圏内にあるとはいえ、せめて島に1泊はしていろいろ見て周りたいと思っています。
【関連施設】
★高麗人参栽培地(고려인삼재배지)
住所:仁川市江華郡河岾面三巨里991
電話:032-933-5001(江華高麗人参農協)
体験料W1万(高麗人参1本の土産代を含む)。体験は要予約。
★江華獅子足ヨモギ(강화사자발약쑥)
住所:仁川市江華郡良道面中央路874番キル1(仁山里285-14)
電話:032-937-5001
体験は要予約。
★江華島ヨモギ韓牛(강화섬약쑥한우)
住所:仁川市江華郡仙源面仙源寺址路32(新井里247-1)
電話:032-934-1212
木谷 朋子
『留学ジャーナル』の編集者を経て1989年より2年間イギリスへ留学。帰国後はイギリスを始め、ヨーロッパ各地やアジア、オーストラリアなど、世界各地を取材。海外の旅文化や最新の旅行情報、語学、留学をテーマに幅広い分野で執筆活動を続ける。韓国関連の著作:『Live from Seoul』(ジャパンタイムズ)、『人気韓国ドラマロケ地めぐり』(学研)ほか、『るるぶ韓国』、『るるぶソウル』(JTBパブリッシング)では『韓流ブック』を担当。