韓国で美味しい牛焼肉を心ゆくまで満喫したい人への耳より情報
韓国といえば焼肉! というフレーズは韓国の多様な姿が知られるにつれて、死語にも等しいアオリ文句になってしまいましたが、それでも韓国で食べる焼肉には格別のワクワク感があります。それも牛焼肉となればなおさらですね。リーズナブルなサムギョプサル(豚バラ肉の焼肉)や、テジカルビ(豚カルビの焼肉)でも一定以上の高揚感は楽しめますが、やはり牛肉、それも韓牛(和牛に相当する韓国産のブランド肉)となれば、食卓に臨む気合いからして変わってくるというものです。
何しろ最近の韓国だと、牛焼肉もいい値段するんですよね。美味しい韓牛をリーズナブルに味わえる、なんて情報は韓国人でも思わず身を乗り出すぐらい貴重なものです。
京畿道安城(アンソン)市にある「ムハンジョン」は、まさにその韓国人に身を乗り出させるような韓牛焼肉の専門店。
安城という町はソウルから南に車で1時間半ほど下ったあたり。首都ソウルを囲む京畿道エリアの最南部にあって、中西部の忠清南道エリアと接する地域です。古くから鍮器(ユギ)と呼ばれる真鍮製の器作りで栄える一方、男寺党(ナムサダン)いう旅芸人的な人たちの本拠地としても知られていました。
そして、安城は韓牛の生産地としても有名。なので、こういった店が成立する背景になっているのでしょうね。これから紹介する「ムハンジョン」は漢字で書くと...。
「無限亭」
なんと、韓牛を無限に食べられるお店なのです。
メニューを見ると「韓牛」の後ろに驚愕の4文字を発見
ハングルの読める方はこちらのメニューをご覧ください。いちばん上に「韓牛無限リフィル(=食べ放題)」とあり、大人(中学生以上)W2万8000、小人(小学生)、子ども(数え年で4〜7歳)W5000という値段設定になっています(2015年2月取材時点)。
食べ放題だからといって質より量という訳ではありません。地元である安城産の韓牛(どうしても仕入れのない場合のみ他地域産も使用)は噛み締めるほどにうま味が濃く、脂もしっかり楽しめるのが持ち味。トゥンシム(ロース)、チェクッサル(腰下の部位)といった部位がまな板に載って出てきます。
炭火で網焼きにするのはすべてセルフサービス。韓国の焼肉店に行くとたいてい店の人が親切に焼いてくれますが、けっこうな量をいっぺんに焼くので、食べるのに忙しかったりしますよね。自分のペースで焼けるのはむしろありがたかったりします。
よくある不満を回避する人気店ならではの優良サービス
そして、肉のおかわりもセルフです。店内に専用の冷蔵庫が設置されており、そこに肉を載せたまな板が大量に用意されています。これを自分で選べるというのが何よりのポイントで、食べ放題にありがちな...。
「追加の肉がなかなか来ない!」
「やっと来たと思ったら最初よりも量が少ない!」
「肉質もなんだか落ちている気がする!」
といった不満がありません。自分で食べる肉ですから、それは必死になって選びますし、それがまた楽しかったりします。自分で選んだ肉が思い通りに美味しかったら、それこそグッとこぶしを握るほどの幸せですよね。
食べ放題には含まれていませんが、単品メニューも充実。焼肉としては牛カルビや霜降りロース、希少部位の盛り合わせなどがありますし、日本ではなかなか食べられなくなってしまったユッケも用意されています。
せっかくなのでオーナーのご夫婦もご紹介。初めて足を運んだときにいろいろ話を伺ったのですが、肉はもちろんとして、炭や網への細かなこだわりを熱く語ってくれました。食べ放題という業態だからこそ、安かろう悪かろうにはしたくないとの思いがあるのでしょう。セルフサービスなども活用しつつコストカットにも力を注ぎ、よい肉を安く楽しんで欲しいとの思いが伝わってきました。
<店舗データ>
店名:ムハンジョン(무한정)
住所:京畿道安城市孔道邑徳峰書院路62(万井里383)
住所:경기도 안성시 공도읍 덕봉서원로 62(만정리 383)
電話:031-655-8595
牛肉好きなアナタにとってこの町がうってつけである理由
さて、お腹がいっぱいになったら周辺観光にも足を伸ばしてください。冒頭でも書いたように安城といえば鍮器(真鍮の器)の名産地。市内には安城鍮器に関する展示を行っている「安城マッチュム博物館」があります。
安城マッチュムとは、韓国語における慣用句のひとつで「おあつらえ向き」「うってつけ」という意味。古くから安城で作られてきた鍮器は質が高く、望み通りの品が手に入ることから、まるであつらえたかのようにぴったりの品を「安城マッチュム」と表現するようになりました。
例えば、美味しい牛肉を思う存分リーズナブルに食べたい人がいれば、先に紹介をした「ムハンジョン」は、まさに安城マッチュム。ぜひ最大限にお腹を空かせたうえで安城を訪れてみてください。
<物件データ>
店名:安城マッチュム博物館(안성맞춤박물관)
住所:京畿道安城市大徳面西東大路4726-15(内里山57-2)
住所:경기도 안성시 대덕면 서동대로 4726-15(내리 산 57-2)
電話:031-676-4353
八田 靖史
1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年より執筆活動を開始し、最近は講演や、企業のアドバイザー、グルメツアーのプロデュースも行う。著書に『魅力探求!韓国料理』(小学館)、『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品!ぶっちぎり108料理』(三五館)ほか多数。ウェブサイト「韓食生活」を運営。2015年より慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。