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ぶらりと歩きたいソウル〜100年前と、50年前と、今が混在する町

   
八田 靖史
八田 靖史
 

ぶらりと歩きたいソウル〜100年前と、50年前と、今が混在する町

西村エリアへは市庁からマウルバス9番に乗っても便利

西村と書いてソチョン。朝鮮時代の王宮である景福宮(キョンボックン)の西側地域を西村と呼びます。最寄りとなるのは地下鉄3号線景福宮駅。2番出口から北へ向かったあたりが西村エリアに該当します。住所でいうと通仁洞(トンインドン)、体府洞(チェブドン)、楼上洞(ヌサンドン)、楼下洞(ヌハドン)など。かつて王宮のまわりにはさまざまな官職の人たちが住んでいましたが、この西村には通訳や医師といった専門職の人が多かったそうです。

一方で景福宮から東のエリアを北村(プッチョン)と呼びますが、こちらは高級官僚が多く住んでいたとか(東にあるのに北村と呼ばれているのは鐘閣や清渓川から見て北にあるという意味です)。それに比べると西村は少し庶民的な地域だったといえそうです。

路地に入ると住宅街の中に伝統家屋がいまも残っている

北村は早くから観光地として有名になりましたが、それに続く形で西村も最近はだいぶ知名度を高めてきました。どちらの町も伝統家屋の韓屋(ハノク)を多く残し、昔ながらのソウルが風景に溶け込んでいるのが特徴。とはいえ、観光地化が進んで洗練された北村に対し、西村はまだ生活のにおいを残しています。おしゃれなカフェや雑貨店も増えてきましたが、路地にはいまだ伝統家屋と普通の住宅が混在し、文化財ほどではない少し古いソウルの町並みも同時に見ることができます。100年前と、50年前と、今が混在する町、という表現であればしっくりくるかもしれません。

西村エリアを象徴する有名店、有名市場といえばコチラ

昼どきにはこの大行列。席数は多いので回転は速いとか

このエリアでもっとも有名な飲食店といえば、サムゲタン(高麗人参とひな鶏のスープ)専門店の「土俗村(トソクチョン)」でしょう。ランチタイムとなればこの行列。西村が注目される前から、この店には来たことがあるという人も多いはず。

容器を片手に市場を歩き、少しずつおかずを買う楽しさ

そして、この西村一帯を有名にしたきっかけのひとつが通仁市場(トンインシジャン)でした。よくある昔ながらの在来市場なのですが、市場で販売する惣菜を少量ずつ専用のコインで購入し、自分だけの弁当を作れるイベントが大当たりしました。

キルムトッポッキは醤油味と唐辛子味の2種類がある

同時に、昔ながらのキルムトッポッキ(油で炒めて作る餅炒め)も名物として脚光を浴び、B級グルメを楽しめる市場ということで大勢の観光客も訪れます。

そして、最近はその通仁市場を抜けた先を訪れる人がたくさん。

散策途中のランチにもぴったりの老舗中華料理店

昔ながらの姿を残す永和楼。50年ほどの歴史があるとか

通仁市場を抜けたあたりは楼上洞(ヌサンドン)、楼下洞(ヌハドン)と呼ばれる地域。一帯は少しずつ再開発が進んでおり、散策途中にふっと目を引く店が増えてきました。住宅街風の路地にギャラリーがあったり、ゆったり落ち着けるカフェができていたり。

一方で、昔ながらの書店がそのまま残ってシンボル化しているかと思えば、同じ通りの「永和楼(ヨンファル)」という老舗中華料理店も話題のスポットです。

チャジャンミョンW4500。良心的な価格も嬉しいところ

散策途中のランチにチャジャンミョン(韓国式のジャージャー麺)というのもいいですよね。甘くこってりとした黒味噌には刻んだタマネギとひき肉がたっぷり。麺と絡めてずずっとすすれば妙に懐かしさを感じてホッとします。韓国人であれば「昔ながらの」という部分を強調したくなるでしょうね。昼どきの店内が大混雑なのはもちろん、ひっきりなしに出前の電話もかかってきていました。

お店としては、ピリッと刺激的なコチュカンチャジャン(唐辛子入りジャージャー麺)や、コチュチャンポン(激辛の海鮮麺)もおすすめとか。辛さに自信のある方は試してみてください。

<店舗データ>
店名:永和楼(영화루)
住所:ソウル市鍾路区紫霞門路7キル65(楼下洞25-1)
住所:서울시 종로구 자하문로7길 65(누하동 25-1)
電話:02-738-1218

店の壁や屋根にも注目したい遊び心満載のチキン店

派手な外観にも見えるが入口は韓屋らしさを残している

そしてもう1軒のおすすめがコチラ。

築100年以上の韓屋を移築したチキンの専門店で「西村ポンダク」といいます。外観からもわかる通り、遊び心たっぷりに店を飾っているのがひとつの魅力。壁にユニークなイラストが描かれていたり、卵の殻を利用したベンチが置かれていたり。そしてまた、ふと店の屋根に目をやると...。

店の内外にある細かな仕掛けを発見するのも楽しい

こんなところでニワトリが巣を作っていたりもします。

トンダクは1羽W1万4000。ハサミでカットして賞味

そんなテイストは料理にも活かされており、写真は昔ながらのトンダク(丸鶏揚げ)ですが、千切りのジャガイモで作った巣に座り、ウズラの卵を温めています。さながら屋根のニワトリを見るよう。帰り際に屋根を見て、もう1度クスッと笑える仕掛けです。

こんな感じにグルメだけ見ても町の雰囲気は伝わるかと。

ただ実際に行く場合、月曜日だけは休みの店が多いのでご注意ください。僕はチャジャンミョンの後に、ランチをもう1軒、スイーツをもう1軒ハシゴしようと目論んでいましたが、いずれも月曜定休で悔しい思いをしました。また必ず足を運ぼうと思います。

<店舗データ>
店名:西村ポンダク(서촌봉닭)
住所:ソウル市鍾路区玉仁3キル23(楼上洞32-2)
住所:서울시 옥인3길 23(누상동 32-2)
電話:070-7758-8985

八田 靖史

八田 靖史
1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年より執筆活動を開始し、最近は講演や、企業のアドバイザー、グルメツアーのプロデュースも行う。著書に『魅力探求!韓国料理』(小学館)、『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品!ぶっちぎり108料理』(三五館)ほか多数。ウェブサイト「韓食生活」を運営。2015年より慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。

    

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