伝統茶は薬効に優れた健康茶
こんにちは。寒い日が続きますが、体は冷えていませんか?韓方(ハンバン)の世界では、「冷えは万病の元」と言われ、体が冷えると、血の巡りが悪くなり、免疫力や新陳代謝などが低下して、それが病気の原因になるとされています。今回は、そんな冷えの改善にも効果があり、疲労回復や風邪予防、デトックスにも効くといわれる「伝統茶」のご紹介をしたいと思います。
韓国ではお茶といえば、伝統茶が主流です。緑茶もありますが、日本のように日常的に緑茶を飲む習慣はなく、逆に今世紀に入って緑茶を見直す動きが出てきているくらいです。やはり、ナツメや柚子、カリン、ショウガなど、木の実の根や皮などの果実、米などの穀類などを蜂蜜などに漬け込み、そのエキスを薄めて飲んだり、草木を乾燥させてお湯を加えて飲んだりする伝統茶の方が主流ですね。薬効にすぐれ、体に良いお茶として韓国では日常的によく飲まれています。
種類もバラエティに富み、梅実茶(メシルチャ)、柚子茶、五味子茶(オミジャチャ)、ナツメ茶、雙和茶(ソウワチャ)、シッケ、水正果(スジョンガ)、梨茶、人参茶、霊芝茶など、気軽に飲めるお茶だけでも、20種類以上あります。
ちなみに、私が最初に好きになった伝統茶は「五味子茶(オミジャチャ)」。夏になると、冷たくした五味子茶に、花のカタチにカットしたスイカや梨を浮かべた「五味子花菜(オミジャファチェ)」がメニューに登場します。これがまたとてもキレイで美味しいのです。夏の限定メニューですが、ぜひ一度試しに飲んでみてください。
この「五味子茶」は朝鮮五味子という木の実から作られるお茶で、酸味、辛味、塩味、苦味、甘みの5つの味をもちます。ドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』でチャングム役を演じたイ・ヨンエが、撮影中の疲れをとるために飲んだということで、日本でも知名度が一気にアップしましたが、体調によって酸味、甘み、苦みなど、反応はさまざまのようです。天然のビタミンCがたっぷり入っているため美肌効果も高く、肺や腎臓を保護し、膀胱の活動を活発にする効果もあります。
ソウルの骨董ストリート仁寺洞
最近明洞(ミョンドン)や江南(カンナム)のカフェでも、伝統茶メニューを出すところが増えていますが、ソウルで伝統茶といえば、やはり「仁寺洞(インサドン)」ははずせません。仁寺洞は、朝鮮王朝時代の雰囲気を残す骨董街としても知られ、今でも骨董品、韓紙、陶磁器、ポシャギ、刺繍などの伝統工芸品を扱う店やアートギャラリーが多いエリア。最近観光客が増えすぎて、お土産物やさん的な店が増えてしまったのが少々残念ですが、美味しい食堂も多いですし、私もソウルで時間があれば、必ず伝統茶の店にも立ち寄ります。仁寺洞には、伝統茶カフェがたくさんあるのですが、韓国の伝統家屋を改装した韓屋(ハノク)系と普通のカフェ風に分かれ、まさに玉石混合状態です。
私も何軒か行きつけの店があるのですが、初ソウルの友達を連れて行くときには、耕仁美術館の中にある「伝統茶院」へ出かけます。何しろ500坪以上の敷地に広々とした庭と3つのアートギャラリー&アートショップがある美術館。なんとなくホッとできる空間なので、観光客が多いとわかっていても足が向いてしまいます。韓屋には伝統家屋独特の風情もあります。お茶も美味しいですから、韓国らしさを感じたい人には特におすすめです。
両班(貴族)屋敷をリメイクした「閔家茶軒」
もう一つのおすすめは「閔家茶軒(ミンガダホン)」というフュージョン・レストランです。仁寺洞ではひときわ優雅なただずまいの韓屋です。私は食事だとちょっとお値段が高かったので、お茶に行ってみることにしました。
中に入ってみると、外から見ていた以上に素晴らしいお屋敷でした。店内はヴィクトリア時代風の英国家具や韓国伝統家具が置かれており、インテリアも東西文化をうまく融合したおしゃれでエレガントな雰囲気。もともとの建物は20世紀初頭に建てられ、韓国最後の王妃、明成皇后の一族・閔家の子孫が住んでいた両班(貴族)屋敷だそうです。現在はソウル市から歴史建造物に認定されています。
日本にも和洋折衷という言葉がありますが、ここはまさに韓洋折衷。スタッフもウエイターは蝶ネクタイ、ウエイトレスは白のブラウスにロングスカートという服装で、物腰柔らかく丁寧に応対してくれます。次回はお茶だけでなく、食事に行ってみたくなりました。
また、「閔家茶軒」には、緑茶もいくつか揃っています。韓国では儒教の影響で一時期緑茶文化が廃れてしまったのですが、近年緑茶文化が見直され、伝統茶のほか緑茶を出す店も増えています。私が好きなのは、ドラマ『夏の香り』のロケ地にもなった韓国南部の緑茶畑「宝城(ポソン)」で採れる「雨前(ウゼン)」というお茶。最高級の新茶ですが、ソウルではロッテ百貨店などでも購入できます。
伝統茶豆知識主な伝統茶の種類
最後に、伝統茶の種類と効能についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
●五味子花菜(オミジャファチェ)・・・・・冷たくした五味子茶に、花の形にカットしたスイカや梨を浮かべたもの。五味子茶(オミジャチャ)朝鮮五味子という木の実から作られるお茶で、酸味、辛味、塩味、苦味、甘みの5つの味をもつ。天然のビタミンCがたっぷり入っているため、美肌効果もあり。肺や腎臓を保護し、膀胱の活動を活発にする効果がある。
●雙和茶・・・・・韓方薬剤(桂皮、甘草、熟地黄、勺薬などの9種類)をじっくり煮出し、松の実やくるみを浮かべたお茶。伝統茶の中では一番苦いが一番薬効も高い。ストレスがあるときや疲労回復に効果あり。
●梅実茶・・・・・完熟梅を蜂蜜にじっくり漬け込みエキスをお湯で割って飲む。甘みと酸味のバランスが絶妙。ビタミンCが豊富。梅は消化促進に効果あり。
●柚子茶・・・・・蜂蜜や砂糖に漬けこんだ柚子をお湯で割って飲む。胃腸保護や消化促進に効果あり。初めて伝統茶を飲む人でも飲みやすい。
●花梨茶・・・・・・カリンを蜂蜜に漬け込みエキスをお湯で割って飲む。甘いお茶で香りもよく飲みやすい。呼吸器系や喉の痛みに効果がある。
●トングレ茶・・・・・トングレ(日本名アマドコロ)と呼ばれる植物の根を煮出したお茶。胃腸や呼吸系の鎮静や鎮痛、老化予防に効果あり。
●ナツメ茶・・・・・ナツメの実を煮出したお茶。ビタミンが豊富で疲労回復や冷え性、胃腸を保護する効果あり。飲みにくい人は黒砂糖を入れると飲みやすくなる。
●生姜茶(センガンチャ)・・・・・生姜とナツメを煮出して蜂蜜を加えて飲む。甘くて飲みやすい。解熱や風邪予防の効果あり。
●人参茶・・・・高麗人参を蜂蜜に漬け込んでそのエキスをお湯で割って飲む。独特の苦味と香りがあるが、薬効効果の高いお茶。疲労回復やストレス防止に効果あり。
木谷 朋子
『留学ジャーナル』の編集者を経て1989年より2年間イギリスへ留学。帰国後はイギリスを始め、ヨーロッパ各地やアジア、オーストラリアなど、世界各地を取材。海外の旅文化や最新の旅行情報、語学、留学をテーマに幅広い分野で執筆活動を続ける。韓国関連の著作:『Live from Seoul』(ジャパンタイムズ)、『人気韓国ドラマロケ地めぐり』(学研)ほか、『るるぶ韓国』、『るるぶソウル』(JTBパブリッシング)では『韓流ブック』を担当。