『南仏』というと頭の中によぎるのは、ラベンダー畑や紺碧の海を想像するかもしれません。とはいえ、ラベンダーが咲く時期は、毎年大体6月中旬〜7月中旬頃。それ以外のシーズンでも南仏は一年中満喫できる場所なんです。
まずは、南仏プロヴァンスの海の玄関口マルセイユは、2013年、都市再開発の大規模な工事を終え、モダンな都市に生まれ変わりました。その中でも、海沿いに建つヨーロッパ地中海文明博物館は、マントンの新コクトー美術館を手掛けた建築家リュディ・リチオッティ作。繊細なレースのような外観には南仏の陽光が差し込み、美しい光と影のうつろいを創り出しています。
また、マルセイユの丘の上に建つノートルダム・ド・ラ・ギャルドバジリカ聖堂は、マルセイユの街を一望できる絶景スポット。マルセイユに来たなら、是非この絶景を楽しんでください。
そして、何と言っても、南仏名物のグルメと言えば『ブイヤベース』です。個人的に言えば、コースの前菜的に出てくる『魚のスープ』こそが、実は一番美味しいのです。魚介や甲殻類の"うまみ"だけを抽出した濃厚なスープの上に、トーストとパルメザンチーズ、アイオリソースを浮かべて、崩しながら食べて行く、まさに海の味覚がいっぺんに味わえる極上のスープです。その後出てくるお魚の1皿は、既に"うまみ"を出し切ってしまった魚たちなので、今一つ、味わいに欠けてしまいます。なので、私からのおススメの食べ方は、アラカルト方式。前菜は、『生牡蠣や貝などの盛り合わせプレート』とメインは『魚のスープ』のみで!
さて、旅の本番は、何と言ってもプロヴァンスの内陸部リュベロン地方に向かうことです。どうしても、鉄道移動が便利なマルセイユ、エクス・アン・プロヴァンス、アヴィニョンに目を向けがちですが、プロヴァンスの良さは「全てリュベロン地方にある!」と言っても過言ではないのです。
なかなか行きにくい場所だからこそ、そこに広がる原風景や小さな村々の良さがたくさんあります。ルールマランは、パリのお金持ちがセカンドハウスとして買うだけあり、田舎の村でありながら洗練された気品さえ感じ、おしゃれなブティックなどもあります。
また、オークル(赤土)の採出場があるルシヨンは、街全体が赤いイメージ、ゴルドは『天空の街』と呼ばれるだけあって丘の上にある街です。毎日、どこかしらの町では、マルシェと呼ばれる朝市が開催され、地元で採れた野菜を始め、自家製のオリーブオイルやハーブ入りの石鹸、ラベンダーを使ったポプリや、プロヴァンスプリントでできたランチョンマットやクッションなど、何度でも行きたくなってしまう南仏の魅力がそんなところにもあります。
是非一度、南仏プロヴァンスに訪れてみてはいかがですか?
みえぞう
フランス在住歴は3年半。アラン・デュカス会長のフランスのホテルグループ、シャトー&ホテル・コレクションの日本予約センターにて予約・手配を行っている。前職で南仏&モロッコのホテル調査に奔走し、公共交通機関 をフル活用した経験を積み、今では旅行術のスペシャリストになる。食べることをとことん愛し、自他共に認めるグルメ。仕事と趣味を兼ねてフランスと日本を往来し、現在はフランス初心者から上級者の方まで、旅のお手伝いをしている。少しでもフランスの良さが伝えられればと思い、『ふらんす地方漫遊記』の連載を担当。